航空医療

陸自LR-2事故に対する残念なコメント

そんなの言わせとけ、ほっとけ…と言われそうなんですが…

陸自機の墜落事故のニュースへのコメントを見ていたら、
自衛隊が急患搬送をすることへの理解というか、
航空搬送システムへの無理解に正直、辛い気持ちになりました。

これでは本当に命を賭けて活動してきて、亡くなられた隊員さんが
あまりに浮かばれません。

代表的なコメントとして、システムを何度も利用した側の人間として
一応反論しておきます。

>患者1人のために4人が犠牲に

 陸自の航空機はもっと多くの命を救っています。
 決して「一人のために」犠牲になったのではありません。

>飛行をやめることができなかったのか?
>こんな悪天候で飛ばすなんて。

 こんな悪天候…だから自衛隊だったのです。
 札幌までの搬送は道南ドクターヘリの管轄外ですし、
 要請の順序から言えば防災ヘリや
 消防ヘリ、道警ヘリなども断られているはずです。

 ただ、自衛隊でも飛ばないこともあります。
 離島勤務の時は、それで海上保安庁の巡視艇で
 患者さんを運んでもらったことがあります。

>結局救急車で行ったのなら、最初から救急車で行けばよかったのでは?

 患者さんの病状がわからないのですが、
 そもそも五稜郭病院から、函館市内の別病院ではなく
 大学病院に搬送…という時点で
 単に「急病」というだけではなく特別な病態が
 あったのではないかと推測します。
 心筋梗塞や脳卒中、大動脈解離というオーソドックスな急性疾患なら
 別に函館市内でも十分対応できるはずだからです。

 また、道央自動車道を経由すると、
 函館→札幌間は310kmあります
 東京からだと、新潟、名古屋、仙台くらいまでで350~360kmくらいです。
 本州だとその間にも大都市がいくつもあるのでしょうが、
 この区間は高速を使ったとして、室蘭、苫小牧くらいしかありません。
 函館の医療状況を考えても、室蘭・苫小牧に患者を搬送する意味はないですし、
 そもそも函館~室蘭だって結構な距離です。

 航空機を使用することで、
 実際の搬送時間を4時間から1時間程度に減らすことができます。
 北海道の距離感はそういうものです。

 ただ、実際に航空機をチャーターする手間や時間を考えると
 他の手段を断られて調整に要している時間もあるはずなので、
 実はさほど時間短縮にならないかもしれません(離島は例外です)。
 ただ、同行する医師の立場としては、
 航空機内や救急車内で何か起こっても現実的に対応はほとんどできませんので、
 実際の移動時間を少なくすることには一定の意義があります。

>一人の老人のために、4人の若い命が…

 「高齢の」患者とどこかに書いてましたか?
 それ以前の問題として、
 年齢がどうであろうと、
 航空搬送をしてでも助けなければいけない状況かつ、
 航空搬送をすれば助かる可能性が十分あると
 現場の医師が判断し
(その判断要素の一つに年齢が入ってくる場合はもちろんありますが)、
 家族が同意すれば航空搬送の手続きがとられます。
 あとはどの手段で搬送するかについては、
 医師にはどうにもなりません。
 順番に沿って、受けられるところが受ける、という原則で
 搬送手段が決まります。

>知事が要請とは特別な「政治の力」が働いたのでは?

 自衛隊を動かす場合、原則都道府県知事の要請が必要です。
 特別ではなく、通常の依頼ルートです。

 以前どこかで書いた記憶がありますが、
 通常のヘリが飛べないような状況下での
 遠隔搬送を要する患者の出現は、
 もう災害と同様に考えるべきと思います。

 私も離島で何度も自衛隊のお世話になりましたが、
 政治の力で航空搬送させたことなんて
 一度たりとしてありません。
 患者さんが誰であれ、同じことです。

>この悪天候で要請した知事の責任は問われないのか?

 知事は機関の一つとして、現場の医師の要請に従い
 道警や消防がダメとわかった時点で
 自衛隊に要請することが実質ルーチン化されていますが、
 実際に飛ばすかどうかの判断は全て飛ばす側が行うので、
 知事の責任云々は本件に関してはお門違いです。
 (道のヘリや航空機が墜落したのなら話は別です)

遠隔地や離島では、航空搬送が本当に命綱になることがあります。
誰もが利用する可能性のあるシステムなので、
皆さんがもうちょっと勉強して知識を持っていただけることを
強く望みます。

そうでなければ、亡くなられた隊員は浮かばれません…。

陸自機事故。本当に残念でなりません。

不明陸自機、乗員4人は死亡 山中で発見
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG16HAD_W7A510C1CZ8000/

なんとか無事を祈っていたのですが、
本当に言葉になりません。

離島勤務の時に何度も救われたLR-2がこんな形で墜落し、
乗員の命が失われるとは、痛恨の極みです…。

亡くなられた隊員の皆様のご冥福を心よりお祈りいたします。

患者搬送に向かった陸自LR-2が行方不明に…。

隊員4人乗せた陸自偵察機 消息絶つ 北斗市方面か? 捜索続く 北海道
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170515-00010000-hokkaibunv-hok

患者搬送に向かう途中だったようです。

陸自のLR-2には離島勤務の時に本当にお世話になっていました。

陸自を動かしたということは、「陸自でなければならない」状況があったということでしょう。
どれだけ過酷な状況で動いているかは、
かつて私が撮影した下記動画を御覧ください。

こんな状況でも、
彼らは一旦飛ぶと決めたら、頑張って飛んでくれたのです。

なんとか少しでも良い状況で発見されることを祈っています。

自衛隊と猛吹雪と航空搬送

さて、目下、国立保健医療科学院での研修は続いています。
7月半ばまではずっと研修が続きます。

そんな中、講義に陸上自衛隊の医官の方に来ていただきました。
講義の中身は、現在の自衛隊の身分的なことや、災害出動の法的根拠など、
健康危機管理のために必要な知識でしたが、
その災害出動の一環として、患者搬送があります。

実は患者搬送については、こちらのエントリーでも触れたのですが、
離島勤務中の、まさに冬の厳しい時期にもっとすごい未発表映像が
あったのを思い出しました。
(むろん、患者さんを迎えのドクターに引き渡し 自分たちの手を離れてからの撮影です)

もちろん、かかわった全ての方々に感謝の気持ちしかないのですが、
こんな中で飛んでくれるのは、飛ぶことができるのは自衛隊だけです。

命をかけて命を守る人たちの存在も、時に思い浮かべていただけると、
このブログの目的の一つが果たされます。

何度でも、御覧ください。

航空搬送

陸上自衛隊機LR-2による航空搬送の模様です。
今回は搬送先から医師が迎えに来てくれたので、見送りです。
(患者さんが完全にこちらの手を離れてから撮影しています)

この暴風の中、飛行機を飛ばしてくれた陸上自衛隊の皆様。土曜日の夜中にもかかわらず迎えに来てくれた搬送先の先生、そして夜間閉鎖中の空港をあけてくれた空港職員、かかわった全ての皆様にこの場をお借りして熱く御礼申し上げます。

島の医者のお仕事~島外医療機関への転院~

ご無沙汰しております。

私たちの住む島は人口約5300人。とても、自己完結型医療を行う病院を支えられる人口規模ではありません。


このため、自分たちで対応ができず、しかも急を要する疾患…ばかりでなく、

海を挟んだ直近の病院でも診られず、札幌や旭川の病院での治療を要するような状態であれば、

酸素や点滴の薬などの都合でそれほど緊急を要さないような病態でも

ヘリコプターや双発機などを使うことがあります。


こういう患者さんの搬送では、客観的に見ると

「飛行機をタクシーがわりに使っている」

と言われてしまうかもしれませんが、

離島の場合は、航空機の利用の判断は単に緊急性だけで行われるわけではないことは、

是非ご理解いただきたく思います。


一方、患者さんに札幌まで自力で移動をお願いしたり、

あるいは海の向こうの後方病院にフェリー定期便での転院受け入れをお願いすることもあります。


当地からのフェリー便は夏で4便あります。

島から出るフェリーは、第一便が10時20分対岸着なのですが、

第2便が対岸に着くのは、15時45分です。3,4便ならもっと遅くなります。

常識的な病院の受け入れ時間ではありません。


また、当地から出発する航空便で札幌に行く場合、その日は前泊して次の日朝一番で

医療機関を受診するか、あるいは、

夕方以降の遅い時間の入院受け入れをお願いせざるをえません。


正直言ってしまえば、受け入れる方にとってはその多くが時間外(あるいは時間内ぎりぎり)の

患者受け入れとなってしまうので、とても大変なのです。


おそらく、私たちが受け入れをお願いする電話の向こうでは、

「また、島かよ…こんな時間にしか紹介できんのか…」

という会話がなされているであろうことは容易に想像がつきます。


そうなのです。残念ながら、非常に申し訳ないことですが、

こんな時間にしか紹介できないのです。


それは現場の医師の責任でも、住民の責任でもありません。


強いて言えば、フェリー会社と航空会社の組んだダイヤの問題です。


むろん、転院適応や緊急性を考慮し、その日でなくても良い患者さんは、

極力、ホテルで前泊してもらうか、船なら翌朝第一便で出るように手配してますが、

やはりそうはいかない患者さんもいらっしゃいます。


我々の仕事は、そういった受け入れ先の医療機関に、

「片っ端から頭を下げる」ことです。

これ、非常に大事なのです。


受け入れ先となる医療機関のスタッフの皆様にはどうか、島の特殊性につきご理解いただくとともに、

島の住民の皆様には、受け入れ決定の瞬間に多くの人員の残業が決まってしまう

受け入れ先病院スタッフに、是非感謝の念を持っていただければと思っております。


これも島の医療の難しい一面です。

頭を下げるのがいやな人には、残念ながら島の医者は務まりません。

ま、一般社会でも同じなのでしょうけど、ね。

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