公衆衛生医のお仕事

【公衆衛生医師のお仕事28】麻しん対応

 今回は少し長い話になりますが、是非お付き合いいただければと思います。

 さて、麻しん(はしか)に関する報道が散見されております。

 先だっての報道で、某病院が麻しん患者の発生について公表しようとしたところ、所管の保健所に
 「公表しないよう伝えていた」「非公表にしていた」と伝えられています。
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190213/k10011814011000.html

 そのトーンは様々ですが、それだけ情報が錯綜というか、
 感染症に対して保健所の持っている権限を理解して書いてない記事だな
 という印象を受けました。

 いずれにしても、当該保健所はずいぶんネット上でも叩かれていました。

 このニュースを目にした時思ったのは、「にわかには信じがたい」という印象です。

 私自身は報道に対する姿勢として心がけているのは、
 「○○が✕✕した」という報道があったときは、
 あくまで「『○○が✕✕した』と報道された」という事実としてとらえることです。

 報道を盲信して、その情報のみを鵜呑みにして突っ走ると、より大事なことを見失うことがあります。

 では、なぜ「にわかには信じがたい」と思ったか。

 麻しんについては、多くは自然治癒する病気であるものの、
 いったんかかってしまったら、ウイルスをやっつける薬は存在しませんし、
 一定の割合で重症化したり命にかかわる事例もあります。
 まれではありますが、「亜急性硬化性全脳炎」という深刻な後遺症を感染後数年たってから発病することもあります。

 ただ、麻しんの怖さはそこではありません。
 感染症のうつりやすさを示す指標に「基本再生産数(R0)」という数字があります。
 一人の患者が何人に感染させるかを疫学的に計算して出した指標ですが、
 インフルエンザでこの数字が2程度ですが、
 麻しんでは12~18と言われています。

 麻しんウイルスは空気感染し、すれ違うだけでも感染する危険性があるとされ、
 患者がいなくなったあとも部屋のような空間では
 2時間くらいはウイルス粒子が空中を漂い続けるという
 「うつりやすさ」という面では大変タチの悪い感染症です。

 

 しかし、MR(麻しん風しん混合)ワクチンの普及に伴い、
 麻しん患者は2008年の学生を中心とした流行以来
 日本国内では激減し、そして2015年にはついに
 WHO西太平洋地域事務局より
「日本には土着の麻しんウイルスはなくなった」と認定されました。
 専門用語では「排除」(elimination)といいます。

 そのような状況下で、麻しんが1例出る(海外から持ち込まれた、ということになります)ということは
 大変なおおごととしてとらえる必要があります。
 麻しんの特徴として、発病当初は症状だけでは風邪と区別がつかず、
 さらに症状出現の1日前より感染性をもつというところが挙げられます。

 また、麻しんの潜伏期は10~14日、長くて3週間くらいと言われています。
 つまり
 「患者が見つかった瞬間にすでに誰かに感染させている可能性が高く
  しかもそれが判明するまで2~3週間かかる場合がある

 という、非常に対策の難しい感染症なのです。

 なので、いったん患者が見つかった場合、
 ・どこから持ち込んだか(どこで誰から感染したか)
 ・どこで人に感染させた可能性があるか
 この2点を調べるため、「積極的疫学調査」といって
 その患者の行動範囲を発症3週間前からとことん洗い出し、
 感染している可能性の高い接触者にはあらかじめ網を張り、
 場合によっては不要不急の外出の自粛なんかもお願いし
 感染性の高い期間に人が多数集まる場所に出入りしていた場合には
 そういった施設にもお願いして、同意が得られれば
 施設名を公表して注意喚起を行ったり、
 あるいは患者さんに同意を得た上で
 時系列による行動範囲や、居住地などを公表したりします。
(主に飛行機や列車などの交通機関や、デパートなどの公共の場所、あるいは受診した医療機関など)
 これらの調査は保健所スタッフ(医師や保健師)が、じかにやります。

 当然、患者さんの行動の足跡を公表するには本人の同意が必要ですし、
 施設名や医療機関名を公表するには当該施設の同意が必要です。

 保健所の調査権限については感染症法第15条に定められていますが、
 公表についても実は第16条に厚生労働大臣や都道府県知事(つまり保健所)の
 義務として定められています。

 ただ、第16条第2項では、「前項の情報を公表するに当たっては、個人情報の保護に留意しなければならない。」とも定められています。

 多くの自治体がこれについては何らかのきまりを決めて対応しているものと思いますが、
 北海道においても報道各社との協定のもと、
 (おそらく)施設や個人からは文句の一切出ない(であろう)基準を定めて
 その基準の中で公表を行っています。

 しかしながら、それを越えて公表を行うとなると、
 いろいろな面で軋轢が出てくる場合があります。

 それを避けるための協定なので、当然と言えば当然であります。

 ここに関して保健所は、実は何の権限もありません。

 必要に応じて、「お願いベース」で公表の同意を得てからの公表となります。
 もちろん、公表した施設や医療機関にそれから行ったとしても、麻しんをうつされることは
 これはありえないのですが、
 「風評被害」を恐れて施設側が発表を拒む場合があります。

 それを強制的に公表する権限については
 今はエボラ出血熱やMERS、新型インフルエンザなど、より恐ろしい感染症で
 ようやく議論されているところです。

 実は私自身も行政医師として麻しん対応をした経験がありますが、
 患者の発生した自治体名をつい、市町村レベルで「ポロリ」してしまったことがあります。
 (ふつう公表するのは、どの保健所管内か、までです)
 周囲の職員の顔色が一瞬で変わり、すぐさまフォローが入りました。
 それだけ情報の管理には気を遣っているのです。

 麻しんの法的な位置づけですが、「五類感染症」に定められています。

 感染症法で定める感染症には一類~五類と、「新型インフルエンザ等感染症」があります。
 一類は、有名なエボラ出血熱や、クリミア=コンゴ出血熱、ペストなどの致命的な病気、
 二類は、MERS、鳥インフルエンザの一部、結核など一類ほどではないけれど重い感染症、
 三類は、腸管出血性大腸菌O157のように、感染者の就業制限が必要になる感染症
 四類は、主に動物由来の感染症(E型肝炎や、エキノコックスなど)
 五類は、それ以外で指定する理由のあるもの(多数)
 で、感染症法上の麻しんは五類ですので、
 「その他大勢の一つ」という扱いでしかないのです。

 うち、患者に入院勧告(および措置)権限があるのは一類、二類のみで、
 あとは一~三類で就業制限が認められていますが、
 それと新型インフルエンザ特措法による対応以外には
 保健所(都道府県知事)が感染症患者に対して行動制限を加える法的根拠はありません。
 調査権限については感染症法で認められていますが、
 調査した結果を公表するための基準はありません。

 したがって、当事者の同意のもと、調査を行った保健所の判断で
 患者の移動範囲や、利用施設名を公表したりします。
 しかし、ここで当事者に公表を拒まれた場合、
 公表をかりに強行したとしたら、
 もう結果は火を見るより明らかです。

 これをお読みのみなさんが仮に麻しんにかかった患者だとして、
 行動の中に、「こっそり浮気をしてラブホテルに入っていて2人とも発症」とか、
 「今の勤務先のライバル会社にヘッドハンティングされていて、内緒でそちらに面談に行っていた」とか、
 「DV被害者で夫から逃げるのに新幹線を使った」とか、
 「内緒で性感染症を治療するために同じ日に同じ病院の泌尿器科を受診していた」とか、
 とにかく人に知られたくない事情があった場合に、
 保健所が行動履歴を公表したことで、個人が特定されて
 不都合なことが起こってしまった場合を考えてみてください。
 それが自分だったらと…。

 たとえ名前や居住地を秘匿していようが、行動履歴と性・世代だけで個人を特定できることは
 現実的にあり得ることであって、
 それによって個人に取り返しのつかない損害を与えてしまうこともありうるのです。
 だから、どんな感染症でも、個人や施設の特定につながる情報の漏出には
 どこの保健所でも慎重になります。

 これまで読んできた皆さんにはもうわかると思いますが、
 医療機関が自分から「公表を申し出る」ということは、
 保健所からしてみれば願ってもないことです。

 それを「公表しないよう伝える」ということが、
 果たして現実的にあり得るものなのか、というところが
 報道の方をむしろ疑問に感じた一番の理由です。

 むろん、これまで保健所が公表してきた情報との齟齬による混乱を避ける目的で
 公表前に事前の情報共有を求めたり、記者レクに保健所職員の同席を求めることは
 これはありうることです。

 なので、報道を見たときに思ったのは、
 保健所は情報共有の準備を整えていて、それが終わるまで待ってくれという意味合いの話をしたのか、
 あるいは、患者個人の情報につながる情報にリンクする情報が含まれるため、
 当該患者の同意というか合意が得られるまで公表を待つことを勧めたのか、
 あるいは、単純に病院の風評被害を心配して「まだ公表には及ばない」と考えたのか…(もしこれならちょっとまずいですが…)

 いずれにしても、保健所には病院が麻しん患者の受診を公表することについて、強制する権限もなければ、やめさせる権限もありません。
 これについては報道で保健所側のコメントとして記されていた通りです。

 ただ、麻しんのまん延防止の観点から言えば、公表を止めることに全く利はありません。
 情報を秘匿する利益が、保健所にはないのです。

 以上が「公表を止めたとはにわかには信じがたい」理由です。

 結局今わかっている確実なことは
 「『保健所が麻しんを公表しないよう病院に伝えた』という報道がされた」という「事実」だけです。

 本当に「公表をやめるよう」伝えたのであれば、法的にはともかく
 感染症対応としてはやはり問題だとは思います。
 なのでことさらに保健所を擁護するつもりはありませんが、
 感染症に対する一つの事実を、公権力をもった「役所」である保健所が公表するためには、
 多くの検討と手続きを経る必要があることはご理解いただきたく思います。

 そして、最後になりますが、
 皆様も不幸にして麻しんにかかってしまうかもしれません。
 予防接種を2回受けていても「修飾麻しん」といってやはり感染の可能性は0ではありません。
 しかし、麻しんの感染性をこの文を読んで知っていただいた皆さんには、
 是非、情報共有に協力してほしいのです。

 もちろん、医療機関や大規模で不特定多数が出入りする施設のオーナーさんもそうです。
 きちんと保健所を味方につけて、風評被害が起こらない公表の仕方を考えれば良いのです。
 情報公開をちゃんと行った施設は、
 「ここの施設や医療機関はこんな早い段階で公開するとは危機管理のあり方として素晴らしい」
 と賞賛されるべき施設です。
 むしろ今の時代、下手に秘匿してあとでわかった方が、組織防衛上も
 よほど損失が大きいはずです。

 いったん始まった麻しんのアウトブレイクを終息させるには
 保健所の力は絶対に不可欠です。
 しかし、こんなタチの悪い感染症、保健所の力「だけ」では
 対応はできません。
 住民の皆さんや医療機関も含めた各施設の協力はどんな場合でも必要です。

 麻しんは、本来すでに今の日本には「ない」病気です。
 対応の経験者としてお願いします。
 終息に向け、何卒皆様のご協力をお願いします。

 そして厚生労働省には、
 麻しん対策のための情報公開、情報共有について
 ガイドラインなどと現場に権限を伴わず責任だけを負わせるような小狡いものではなく、
 感染症法改正など、より実効性のある制度改正を切に願うものです。

 そしてもう一つ、麻しんおよび風しんワクチンの接種率向上に
 皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

 

【公衆衛生医のお仕事27】北海道胆振東部地震と災害時の公衆衛生

9月6日午前3時8分 厚真町の震度7を最大震度とする地震が発生し、全道が停電しました。

現時点(9月8日朝8時)で、道内99%が停電から回復しておりますが、
いまだ停電の続いている世帯や、避難中の世帯もあり、
また揺れの大きかった地域では行方不明者の捜索も続いており、
まだ災害急性期は終わっていません。

私の勤務地域は全道でおそらく最も揺れの小さかった地域ですが、
それでも保健所や振興局は停電対応に追われ、昨日(7日)の夜、
ようやく自宅待機体制となり、自宅(公宅)に帰宅できました。

実は単身赴任元の家族の住む地域(札幌市東区)は震度6弱だったのですが、
いろいろあってあと2週間くらいは帰れなさそうです。
ちょっと自分と家族の人生について考えてしまいましたが、
こういう仕事なので、しょうがないと腹を括って次に進むしかしょうがありません。

今回は「全道住民」が被災者となったわけではありませうが、
まずは亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、
負傷者のみなさま、現在も避難生活をしていたり、後始末に追われている
被災中心地住民のみなさまに心よりお見舞い申し上げます。

こちらはほとんど揺れがなかったため、停電で目が覚めました。
枕元のスマホを見ると、胆振東部で震度6強とニュース速報が出ており、
同時に停電が起こった理由まで思いが至らなかったのですが、
どうも全道が停電しているらしいことが判明し、
保健所の職員より電話があり、
道庁本庁および振興局に災害対策本部が立ち上がり、
第3非常配備(全員出勤)が発令されたと連絡があったのですぐ出勤しました。

私の役割は
1,災害対策本部の本部員としての役割と
2,担当部署(保健所)の長としての役割、
3,振興局保健環境部長として管内に3箇所ある保健所を総括する役割の
3つでした。

情報収集・分析にあたり、不足する社会資源を整理し、
それを災害対策本部に上げ、需給バランスの調整をはかることが
核になる部分ではありますが、
災害時のリーダーは誤解を恐れずいえば、
「いかに何もしないか?」がポイントとなります。

私自身が実際にやった仕事といえば、
初動でまだ集まった人数が少ない段階の体制を組み
クロノロ(経時的記録)の書き方を知らない職員に指南し、
情報整理のやり方を職員にさっと教えたあとは、
人が大体そろってくると
大きな部分の決断と、
どうしてもリーダーや医師が出ないといけない外部との調整作業、
会議でのプレゼンテーションや説明を除いては、
職員と話す、励ます、適宜休みを指示する、
優先度の高い仕事だけ直接指示する、
時々EMIS(災害時医療情報システム)の使用法を職員が困ったときに教える、
急ぐときは自ら代行入力する
自分の身の安全を第一に考えるよう指示する、
生き残った検査室の冷蔵庫用の電源を使用して
携帯などを充電するための充電器とケーブルを提供する、
ぐらいの仕事しかやっていません。

うちの職員も大変な中、本当にがんばって業務に当たってくれました。
皆様に心より御礼申し上げます。

あとは、その合間を縫って、停電のためにあまりコミュニケーションのとれない
管内他保健所の所長への情報共有でした。
これが一番手間がかかりました。

電話口頭での報告もいいのですが、
電話よりメールの方が正確性が高く
(言った言わないの問題が避けられ)
かつ通信手段の問題で電話よりはるかにコンタクトがとりやすいということもあり、
管内他保健所の所長とコンタクトがとれることの確認後は
(これは真っ先にやったことの一つです)
全て私用メールでの連絡としました。
コピー機も職場のPCも使用できないため、
自分の携帯とノートPCを持ち込み、
情報を整理して要点をテキストの手打ちにしたり、
メモを写真に撮って送ったり、この作業に意外に時間を食いました。

助けられたのは、当地の災害医療の重鎮である基幹病院の医師が
大学の同級生で、とてもコンタクトがとりやすかったことです。
彼は日頃からうちの職員にも一定の支持を得られており、
そのことで医療側との情報共有や調整が本当に楽で、
本当に助かりました。

管内の医療については、現場の医療機関職員のみなさまが必死で動いてくれたおかげで、
CTやX線装置が働かないとか医薬品などの在庫に問題があったりなどの制限の中で、
完全休診をほとんどの病院が回避したことは特筆に値します。
この場を借りて現場病院職員のみなさまに御礼申し上げます。

一方で、診療所は休診になってしまったのがかなり多かったですが、
これはマンパワーなどを考えるとやむを得ないところがあります。

揺れが少なかった当地で最大の問題となったのが人工透析ですが、
透析施行施設どうしがしっかり連絡をとりあっており
(時々保健所が情報共有に介入しつつ)
停電が長期化した場合の透析患者大量移送などの可能性を考慮しながら
最終的にはそのような最悪の事態には至らず
ほぼ全医療機関の電源回復まで乗り切ったこと、
これも現地医療機関職員のみなさまに感謝しかございません。

一方で、緊急時・急性期の臨時電源や発電用燃料の確保、
(病院外での地域の)備蓄や優先度の検討という点では
一定の課題を残したものの、そちらはとりあえずあとの振り返りでの検討事項であり、
まだ振り返る段階ではないので、いまあるもので進むしかないでしょう。

現在は、管内の主要医療機関はごく一部を除いて送電が回復し、
超急性期は乗り切ったというところです。

実は、本庁から声がかかり、週明けから、
被災中心地である、苫小牧保健所や、厚真町のヘルプに入ることになっています。
いわゆるDHEATと呼ばれる業務であり、
ここらへん、DHEATとは何か、詳細に解説している余裕までは今はまだないので、
長崎から西日本豪雨に人が派遣された事例ですが
https://www.ncctv.co.jp/news/56263.html
をご覧ください。

また帰ってきて、少し落ち着いた時点で、
できる範囲で災害時の公衆衛生について書きたいと思います。

被災地のみなさんはもうすでに頑張っているので、
今更「頑張れ」とは言えません、
ところどころで休みをとりながら、何とかまずは災害急性期を乗り切りましょう。

【公衆衛生医のお仕事26】災害時の公衆衛生

西日本が大雨で大変なことになっています。
いまだ、被害の全容すら明らかになっていません。

犠牲になった方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、
市民生活の一日も早い正常化をお祈りいたしております。

今日のエントリーでは、今週私の勤務する地域で行った
防災関連の研修についてアップする予定でしたが、
その裏で本物の大災害が起こってしまったので予定を変更して
災害時の公衆衛生活動についてアップします。

https://www.nbc-nagasaki.co.jp/nbcnews/detail/1252/
長崎県から岡山県に派遣されたDHEAT(災害時健康危機管理支援チーム)の報道です。

発災後の急性期には、
・医療機関そのものが被災する(職員が出てこれない、建物が浸水したり倒壊したりする)
・医療機関への医療機材や食料等の供給が、交通障害等のために絶たれる
・負傷者が医療機関のキャパシティを超えてに大勢押し寄せる。
 更に上記の状況が重なり、医療需要と供給のアンバランスが起きる。
・医療機関や行政との情報伝達が不足しているため、患者があふれパンクしている病院と
 余力があるのに患者の少ない病院が出てきたりする。
・多数発生した重症患者が、地元の高次医療機関だけではさばききれない
などの問題が発生します。

これら状況による「回避可能な死」をなくすことを目的に結成されたのが
DMAT(災害時医療支援チーム)です。
発災後超急性期~急性期(大体72時間程度)をめどに、
自県や他県から被災地に派遣され、
・重症度によって患者を振り分けるトリアージ(Triage)、
・傷病者の初期治療(Treatment)
・圏内でさばききれない重傷者を圏域外に搬送(Transport)
という役割を担うチームです。

一方で、生き残った人たちにも難儀な状況が待ち構えています。
・医療体制が破壊されてしまい、高血圧や糖尿病などのかかりつけの医療が受けられない。薬が足りないのに処方が受けられない。
・避難所の居住環境による病気の発生(感染性胃腸炎やインフルエンザなど)
 (トイレ不足・使用不能→飲水控え→脱水・熱中症)
・自家用車に避難、寝泊まりしている住民の深部静脈血栓症(いわゆる「エコノミークラス症候群」)
・食事の問題(栄養の偏り、食中毒など)
・津波や洪水などで浸水した家屋の消毒
・被災者の心のケア

などの、公衆衛生上の問題が起き、これらも
「回避可能な災害関連死や永続的な障害」の原因となることが
東日本大震災を機に認識されることとなりました。

もちろん、普段から保健所や市町村の保健師さんらは
住民の健康管理、感染症・食中毒の予防や、精神保健の相談を受けていたりするわけです。
ところが、いったん災害となると、それらがどっと押し寄せてきます。
そんな時には地元の役所や保健所、保健師さんや担当職員も被災していたり、
そもそも必要な仕事の絶対量が多すぎて
例えば避難所一つとっても、地元保健師さんには回りきれないとか、
行政管理栄養士や行政薬剤師などはさらに足りなくて対応しきれない状況になります。
ただ、災害時の公衆衛生については、平時の公衆衛生の延長線上にあるものがほとんどで、
そのやり方をある程度ルーチン化して公衆衛生面からの支援を行うために
厚生労働省、日本公衆衛生協会、全国保健所長会などが検討を重ね
この3月に制度化されたのが
DHEAT(災害時健康危機管理支援チーム)です。
公衆衛生医師、保健師、薬剤師、管理栄養士、事務員などがチームを組みますが、
DMATとの大きな違いは、DMATはそのチームのままで動きますが、
DHEATは「溶け込み支援」といって、
被災地の保健所に入り込み、構成員はバラバラになってそれぞれ必要な仕事をします。

その中で、避難所の巡回を手伝ったり、地元スタッフとともに公衆衛生対策を考えたり、
地元保健所の手足となって情報収集に走り回ったり、市町村に対して技術支援を行ったり、
多様な業務をこなしていきます。

災害時の公衆衛生と隣接する分野の支援として、
他に、心のケアに携わるDPATや、リハビリに携わるDRATなどがありますが、
ここでは割愛します。

私は今回この件で直接に支援にかかわることはないと思いますが、
こういう動きがあって、現地に行った公衆衛生支援チームが
どんな活動をしているか知っていただけますと幸いです。

今年もやります! 公衆衛生 若手医師・医学生 サマーセミナー(PHSS2018)

4ヶ月ぶりの投稿になります。
大変ご無沙汰しております。



4月に勤務地の異動があり、前後多忙であったこともあって
更新を怠っていました。



書きたいことはもう、山ほどあるんですが…。
地域医療の問題とか、医師の働き方改革問題とか、、、



で、今回はこれです。
※字が細かいですが、クリックで拡大して御覧ください。



Photo



昨年の状況をこちらに アップしておりますが、
大変な盛況で、申し訳ないながらも定員超過で
断腸の思いで参加をお断りさせていただいたとも担当者より聞いております。



実は今回、1日目のケーススタディを、小生が担当いたします。



2日通じて面白いものにしていきたいと担当者は大変気張っておりますし、
普段臨床であまり触れることのない(わけではなく、関わりが意識されないだけなのですが)
公衆衛生の分野に少しでも触れていただけるといいなと思い、企画しております。

今回は「夜の部(意見交換会)」も含めてすべて都市センターホテルで行います。



参加者数に限りがありますので、
ご希望がありましたら早めのお申込みをおすすめします。
申し込み開始は6月25日(月)からとなっております。
申込み方法はこちら を御覧ください。
(申し訳ありませんが、対象職種は医師・医学生のみとさせていただきます)



なお、この企画に関してのFacebookページ も開設しておりますので、
よかったらフォローしてみてください。



公衆衛生に興味をお持ちの医学生・医師の皆様の多数のご応募をお待ちしております!




【公衆衛生医のお仕事25】インフルエンザ診断・届出に関しての定点医療機関のみなさまへのお願い

Twitter界隈を見ますと、インフルエンザの診断に、迅速検査は必須ではないし、
迅速検査陰性はインフルエンザでないことを意味しない、ということも表立って言われるようになってきましたし、
一部医療機関では、救急外来でのインフルエンザ迅速検査を行わない方針として明示しているところまで出てきました。

とはいえ市民権を得るまでにはまだまだいってないというのが現状と思います。
私自身も臨床時代に
インフルエンザの迅速検査をせずに診断を連発して、
患者さんやスタッフまでも戸惑わせたこともありました。
とはいえ、そういった事例については、かりに迅速陰性であったとしても
インフルエンザとして対応、治療したわけですから、何も変わらないわけですが。
さて、今後はインフルエンザを検査せず臨床診断を行い、学校などの出席停止につなげる事例、
場合によってはオセルタミビル(タミフル)などの抗ウイルス薬を処方する場合もあると思います。
さて、インフルエンザは、感染症法に定める5類感染症定点把握対象疾患です。
指定届出期間の管理者が(実際には事務方がやっているところがほとんどでしょうが)
届出を行わなければならないことになっています。


そこで、インフルエンザ定点・基幹定点で診断に当たられる医師の皆様、
また、データをまとめる事務担当職員の皆様にお願いがあります。
インフルエンザの届出要件は


[1]臨床症状
 ア 突然の発症
 イ 高熱
 ウ 上気道炎症状
 エ 全身倦怠感等の全身症状
[2]検査所見
 検査方法 迅速診断キットによる病原体の抗原の検出
 検査材料 鼻腔吸引液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液
上記[1]の全てを満たすか、[1]の全てを満たさなくても[2]を満たす


となっております。
つまり、迅速診断は必須ではありません。
迅速診断ではなくとも、上記条件に合致し、担当医がインフルエンザと診断すれば、
届出が必要なことに留意願います。

あらゆる疫学調査においては、
症例の定義を厳格に行うことが前提条件となります。


今後、迅速診断を行わない事例がさらに増えてきて、
そのような事例が定点でカウントされなければ、
「見かけ上」のインフルエンザ発生件数が低く見積もられ、
流行状況の把握に大きな支障をきたすことが予想されます。


迅速診断を行わずにインフルエンザとして診断・治療された事例についても、
届出基準を満たすものについては、漏れのない届出を何卒、お願い致します。

【公衆衛生医のお仕事24】人事評価、そして人事ヒアリング

人が人を評価する。
なんと不遜な行為でありましょうか。

その結果が、部下職員のボーナスや昇給にかかわるとなれば、猶更です。
でも、誰かがやらないといけない作業でもあります。

公衆衛生の現場では、
管理職的待遇を与えられていることが多いので、
この仕事からは逃げたくとも逃げられません。
これは北海道庁全体の話しですが、
評価は、事務能力や業務遂行能力などを評価する「能力評価」と、
職員個々が目標を立て、その達成状況を評価する(目標管理といいます)「業績評価」との
2つの面から行われます。
「能力評価」は毎年11月ごろに、「業績評価」は毎年5月、11月ごろに行われ、
前者は翌年の昇給に、後者は直近のボーナスに反映されます。
ところで、私の部下職員(いつもは「仲間」と呼んでいるのですが、今日に限っては職制の問題なので…)には
事務職員と技術職員がいます。

事務職員は、私なんかよりずっと長く事務をやってきたわけですし、
技術職員はそれぞれに特異分野があって、
当然そこに関しては私より多くの知識・技術をもっているわけです。
そんな職員たちを、どうして上から目線で評価できましょうか…。

かなり悩みましたが、
結論としては「上から目線で評価しなきゃいい」と考えました。
例えば、「ドラゴンボール」でも、クリリンがサイヤ人や宇宙戦士の戦いを見て、
自分にはとても手の届かない実力どうしであっても、どっちが強いかは
読み取れるわけであって(例えがちょっと安直なのはお許しを…)、
職員の働きに感謝と尊敬の念をこめて評価すればよい、ということなのだろうと思います。

幸い、「能力評価」では、評価すべき項目は決まっていますし、
その項目は必ずしも職員の専門能力を評価しているわけではありません。
むしろ「専門能力をどう使いこなすか」が大事なのです。
一方で、「業績評価」については、
各職員が立てた業績目標、つまり、
北海道や地域の出先が抱えるミッションに、どう貢献しているのかを
考慮して評価を行うわけですから、
(これが一致していないということは、上司の指導が悪い、ということになります)
専門性よりもむしろ、役所といったものがどうあるべきかという考え方が重要になります。
そんなわけで、正直やりたくない(と言ってもバチは当たらないですよね…)仕事ではありますが、
逃げられないなら真っ向対峙するのみです。

それとは別に、「人事ヒアリング」という、本庁の年中行事にも行ってきました。
これは実質30分程度もあれば終わるものなのですが、
実際には私の勤務地は本庁から遠隔地のため、前後1日ずつ、たっぷりかかります。

道職員管理職は、内規にのっとって、異動候補者名簿を作成して、
それを本庁に提出します。
その中には、各職員の希望する分野であったり、勤務地であったり、業務適性であったりが書かれていて、
それをもとに異動先を検討します。
その内容を人事担当職員にプレゼンテーションしてくるのが管理職のお仕事です。

しかし、管理職の仕事はそこまでで、要するに発言権はありますが、
人事の決定権はありません。
これも、長く単身赴任している職員もいたりするので、責任重大です。

この作業も同様に不遜な行為だとは思いますし、
やっていて決して「楽しい」作業ではありませんが、
管理職であることを宿命づけられている「行政医師」の、たいせつな仕事ではあります。

公衆衛生 若手医師・医学生 サマーセミナー(PHSS)2017 のお誘い

ご無沙汰しております。

勤務先でも、ワークライフバランス期間とか、プレミアムフライデーとか
いろいろありますが、早く帰っても、残った時間をいろいろ使ってしまうため
なかなか最近ブログの更新ができていません…。

さて、今回は表題の通り

「公衆衛生 若手医師・医学生 サマーセミナー(PHSS)2017」のお誘いです。

Phss

これは、日本公衆衛生協会の地域保健総合推進事業(全国保健所長会協力事業)で、
「公衆衛生医師の確保と育成に関する調査および実践活動」研究班で行っているもので、

私も本年度、この研究班に参加しております。

詳しい内容については
http://www.phcd.jp/02/j_seminar/html/JN_PHSS.html
および
http://www.phcd.jp/02/j_seminar/pdf/JN_PHSS_2017_tmp01.pdf
をご参照いただきたいのですが、

趣旨としては、公衆衛生・地域保健の分野については、
その仕事内容や内情がなかなか医師や学生の間でも知られておらず、
是非その内容を若手医師や医学生のみなさまに知っていただいて、
医師としての進路選択にお役立ていただきたいというものです。

また、行政に進む気が全くなくとも、行政医師の仕事について知っておくことは
臨床に進む上でも決して損ではありません。

対象としては、医学生・研修医・臨床医・入職5年以内の若手公衆衛生医師(年齢は問わない)と
しております。
ある程度の臨床経験を経て行政医師への転身をお考えの方も大歓迎です。

内容としては、実際の公衆衛生医師の話を聞いたり、
食中毒や感染症などの事案についてのケーススタディを行ったり
(これは毎年ご好評をいただいております)
1日目の夜には意見交換会も用意しております。

当日は、私もファシリテータとして参加いたします。

参加は無料ですが(意見交換会は別途かかります)
申し訳ありませんが会場までの交通費はご負担願います。

なお、イベントの宣伝については、
運営委員会の許可(というより依頼)を受けて行っているものですが、
参加申し込みについては、
http://www.phcd.jp/02/j_seminar/html/JN_PHSS.html
をご参照いただき、担当までメールをお願い致します。

参加枠は30名までとなっていますが、結構埋まってきていると聞いております。

申し込み締切は8月4日までとなっておりますが、
ご興味がありましたら、お早めにお申込みください。

【公衆衛生医のお仕事23】自治医科大学医学部学生保健所実習

 大変ご無沙汰しております。

 筆者の気まぐれで投稿をサボっていましたm(__)m

 さて、先週1週間(11月14日~18日)は、わたくしの後輩である
自治医科大学医学部学生の実習でした。

 もともと自治医大の保健所実習は、以前から行われており、
私も埼玉県の幸手保健所でお世話になったことを覚えています。

 自治医大の保健所実習は、慣例として卒業生が所長を勤めている
保健所に学生を派遣することが多かったのですが、
北海道では自治医大卒業生が公衆衛生の道に進んだのが私で2人めということもあり、
今回は初めての保健所実習受け入れということになります。

 それまで道内でも北大の実習受け入れや、初期研修の地域医療研修の一環としての
保健所研修の受け入れはやってきたのですが、

 これらの数日間の研修受け入れより、一段高いレベルの研修が求められていることは
そういった実習を受けた自分自身がよくわかっていたので、
正直内容にはかなり悩みました。

 保健師による家庭訪問の同行や、市町村事業の見学は、可能な限り入れてほしいとの
大学からの要望があり、そちらは入れる形にしました。

 また、保健所によっては「地域診断」まで学生にやらせるような
すごいところもありましたが、さすがにそれは準備が間に合わないのが
明らかなので、今回はそこまで企画できませんでした。

 主な内容としては、各課課長からの業務紹介、
実際の事案を題材とした感染症事案対応の演習
市町村の母子保健事業の見学などを組みました。

ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。

一方で、大学の講義でやるような内容を同じようにやっても
余り意味がないので、
せっかく自治医大の学生が来てくれているので、
地域の医療体制確保に関する講義や意見交換を入れてみました。
北海道の学生が主だったのと、
この地域にも自治医大卒業生の派遣実績があったことから
ちょっと込み入った話もさせていただきました。

これは保健所実習で、というより私がやらなければいけないこととして、
自治体病院の事務方や役場職員などといかに関係を築いて仕事を進めるか、
ということについての講義・意見交換も入れてみました。

実は、夏頃に管内の公衆衛生従事者の初任者研修も担当させていただいたのですが、
その中で、医師との付き合い方をいろいろ講義させてもらいました。
その逆バージョンと考えてもらえばいいかなと思っています。

自治医大の卒業生の多くは、その義務年限の中で自治体病院に勤務します。
また、そうでなくとも地域の保健分野に関し、助言を求められることがあります。
その際に、市町村保健師さんや、役場職員さんとしっかり関係を構築できる
能力はとても大切です。

誤解を恐れず言えば、お互いがお互いを「宇宙人」と認識しているような
状況では、地域医療は立ち行かないということです。

それを学生のうちに何とか伝える機会があるとすれば、
それは保健所実習しかないなと、そんなふうに考えました。

さて、私の勤務する保健所は、道立保健所の中でも最小クラスのミニ保健所であり、
全ての実習内容を単独の保健所で用意するのにはいろいろ足りないこともあり、
最終日は午前中が道立衛生研究所での講義・見学、
午後は本庁に勤務する公衆衛生医師の業務についての講義を各担当者にお願いしました。
私も午後からは本庁に出向いて総括を行いました。

最後に伝えたことは、
「我々の仕事は、データにもとづいて『全体最適』を追求することです。
 しかし、公衆衛生活動によって得られた成果は、必ず個々の住民に
 還元されるものであることを常に認識しながら仕事に当たらなくてはなりません。
 そうでなければ、我々の施策形成は血の通わないものとなってしまいます。」

そんな思いが伝わればいいなと思っています。

今回、実習で来訪された学生はとても意欲的な方ばかりでした。
私の学生時代が恥ずかしくなってしまうような(苦笑)
そんな彼ら・彼女らが将来出て行くであろう、地域の現場で、
今回のことをちょっとでも思い出してもらえればと思っています。

地域のフィールドで、待っています!

【公衆衛生医のお仕事22】表彰伝達と、祝辞・挨拶

気がついたら、1ヶ月半もブログを放ったらかしにしていました。
ご無沙汰しておりますm(__)m

 

さて、久しぶりの投稿は笑って読めるマイルドなものにします((^^;

本日は、道内某所で、歯の衛生週間の図画・ポスターコンクールの
優秀作品の表彰と、簡単なご挨拶をさせていただきました。

表彰伝達や祝辞・挨拶といった仕事は、別に公衆衛生医師だけのものではなく、
病院の院長や、医師会長などでも舞い込んでくることがあります。

本日のイベントでも、地元歯科医師会長さんや、歯科衛生士会長さんなどといっしょに
挨拶をさせていただきました。

こういった挨拶は、いろんな考え方がありますが、私は「原稿棒読み」をあえてしています。

理由としては、私がフリートークをしたらどんなことになるか、
誰よりも自分が知っているからです。
まだ今のところは失言で職を失いたくはありません(((^^;

原稿については、全て自分で作成する場合もありますし、
職場のスタッフに原稿を作ってもらって、それをチェックして、
必要な部分は修正して使うといった場合もあります。 

いずれにしても、これらの挨拶は、
その内容を事前に職場内の決裁を通しています。
なので、それを一言一句とは言いませんが、
大きく外した発言をすることはできません。 

まあ、内容は自分で作るか、最低限チェックはしているので、
当たり前ですが、発言内容に関する責任は全て私が負っています。 

その中で、ひとつだけ言えることがあります。 

どこに行っても、学校の先生や教育者の方の挨拶は本当にうまい 

内容も語り口も、言葉の言い回しの一つ一つも
本当に舌を巻くばかりです。もちろん、原稿など持っていません。 

本当に、見習いたいものです。 

さて、今回は表彰伝達もあったのですが、
挨拶の原稿よりももっと大事で、
かつ、こちらはちゃんと覚えなければならないものがあります。 

それは、表彰をお受けになられる方の名前の「読み」です。 

今回は小中学生対象の図画・ポスターコンクールであったわけですが、
表彰者の方のお名前、なんと半数近くが予備知識なしには読めませんでした
最近の名前は本当に読めないのです(汗) 

こういった表彰伝達の仕事の依頼の場合、
必ず事前に表彰される方のお名前のリストが読みつきで回ってきます。
それを事前にきちんとチェックして、読みを覚えておかないと、
万一表彰される方のお名前の読みを間違えたら、
それは大変礼を失する事になってしまいます。 

今回もそうでしたが、親切なところですと、
表彰状に読みを書いた付箋を貼ってくれたり、
何らかの読み間違い防止策をとってくれます。 

ただ、それはあくまで依頼側のご好意でやってくれていることであって、
そういったものがないことを前提に、被表彰者の名前の読みだけは
何がなんでも覚えていかないといけません。 

 

さて、本日は歯の話をさせていただいたのですが、
私自身が歯に関しては人に何か言えた立場ではありません 

でも、何本か歯を失くして、多くの歯の治療を受けた立場から、あえて言わせてもらいます。 

みなさん、良い歯は一生の宝物です。
大切にしましょう!!

【公衆衛生医のお仕事21】災害対応とEMIS

EMISという言葉、あまり聞き慣れないと思いますが、Emergency Medical Information Systemの略で、日本語では「広域災害救急医療情報システム」と呼ばれます。

アドレスはhttps://www.wds.emis.go.jp/で、一般の方でも各医療機関の簡単な情報や、一般向けの非常時の対応や救命処置、災害対策や関係リンクなどが載っています。

 

ただ、このシステムの本来の部分はもちろん、「関係者ログイン」の向こう側にあり、これは一般の方は触れることができません。

 

DMAT(Disaster Medical Assistant Team)という言葉なら、ひょっとしたら耳にしたことがあるかもしれません。「災害時医療支援チーム」と呼ばれ、きちんと災害医療の訓練を受け、各都道府県を通じて厚労省に登録されている、病院ごとのチームです。

傷病者が多数出るような甚大な災害時には、厚労省~各都道府県が「交通整理」を行い、必要なチームの派遣を要請する、という体制がとられていますが、一方で、災害時には必ず、被害状況を一元化して把握することが必要となってきます。

その中で、医療機関の被災状況や医療需要が激増して大変なことになってないかとか、医療機関のライフラインが寸断されたり、食料や医療ガス(酸素など)、医療材料などが枯渇していないかとか、けが人が集中して対応できずに混乱した状況ではないかとか、そもそも困っている医療機関へのアクセスが可能かどうかとか、そういった状況だけではなく、避難所や救護所の状況、どこどこのDMATがいまどこで何をやっているか、そういった状況を逐一入力し、集約するのが、このEMISの役割です。

 

ここで、疑問に思われるかもしれませんが、そもそも被災病院がネット通じるのか、とか携帯通じるのかという問題があります。電話回線が通じなければ、衛星携帯電話などほかの手段を用いるしかありませんが、被災状況がもはやそれどころではない状況であれば、「未入力」という状況になってしまいます。

 

そういった状況の場合、自治体職員が自分の足と目で被災医療機関の状況を確認の上で、保健所が代わって状況を入力するシステムが、いわゆる「代行入力」と呼ばれ、このために各保健所にはEMISのIDが与えられ、EMISの関係者限定部分の閲覧だけではなく、中をいじる権限も与えられています。もちろん、私も持ってます。…というか、4月に転勤になり、現在の勤務先のIDを地震の数日前に入手したところでした。本来であれば1日目に一番最初にやらなきゃいけない仕事ですね。ここは素直に反省。

 

今回の災害では、私自身はそれを見て何か現地のお役に立てるというわけではありませんが、今の勤務地が地震頻発地帯なので、このサイトの使用方法は常に知っておく必要がありますし、職員にも知らしめる必要があります。はっきり言って、いきなり被災時にやれと言われてすぐ使いこなせるほどユーザーフレンドリーなシステムではありません。緊急時は混乱するという、人間様の方の要素もあるでしょうし。

 

今回の地震では、Facebookなどで支援を要請している病院もあったようですが、確認してみるとEMISに被害状況がアップされていないという状況もありました。

この情報はDMATの派遣や、現地の公衆衛生上の問題解決に使われるので、せっかくネットが使える状況にあるなら、生かしてもらえればと思いました。(むろん、「現場はそうじゃない」とか、システムを作る方が気づかない欠点もあるやもしれませんが)。

 

昨年~一昨年、DMATの机上訓練や実地訓練に公衆衛生側として参加した時には、正直EMISは重くて厳しい状況でしたが、今回アクセスしてみたら、結構改善されている印象を受けました。

 

いずれにしろ、今回被災した医療機関の関係者はこんなブログなんか読んでる場合じゃないでしょうが、こういうシステムを是非最大限に役立てて、一人でも多くの人命が救われることを、少なくとも私は望んでおります。

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