総合診療とは?

総合診療って何だろう(8)~結語

このシリーズは、もともと、「一般内科を標榜しつつ何でも屋をやっていたことはあるけど、「総合診療」を標榜した経験のない」私が、ひょんなことから「総合診療科」の立ち上げに協力してほしいと言われたことに端を発して始まりました。

ここまで読んでいただければおわかりかと思いますが、単に「何でも屋」という意味で、今はやりだからと、「俺は外科でも内科でも何でも診る」とばかりに「総合診療」を名乗ると、痛い目に遭います。


もし総合診療を、何のバックボーンもなしに名乗りたいなら、その前に胸に手を当てて考えるべきです。



・今自分の施設で総合診療を名乗った場合、現存する診療科との仕事の割り振りをどう考えるかというビジョンがきちんとできていますか?

・目の前の患者さんのかかりつけ医として、身体面だけではなく精神面、社会面、経済面も考えてしっかり真正面から患者さんと向き合い続けられますか?

・自分の能力の限界を熟知し、必要なときに絶妙なタイミングで他の医師にアドバイスを仰いだり、患者さんを遺漏なく引き継ぐことができますか?

・「総合診療」という分野は、不採算になりがちな分野でもありますが、それを病院としてきちんと支えられますか?

・周囲の訪問看護ステーションや福祉施設から、信頼される施設であり続けられますか?

・目の前の患者さんを何ともできないような状況に遭遇した時、それでも「何とか」できますか?

・「あなたが」ではなく、「総合診療科が」、ずっと患者さんの「かかりつけ医」でい続けられますか?

・異なるベースで育ってきた医師たちが、一つの診療科としてまとまった診療体制を、ずっと提供し続けられますか?

・(病院で総合診療を行う場合)地域の開業医さんとの棲み分けをどうするか、そういうビジョンはしっかりできていますか?それは開業医さんにとって受け入れられるものですか?

・ときに「雑用科」として使われることなどで下がりがちな医師のモチベーションに、常に配慮し、スタッフのやる気を維持させる方策を考え、病院全体としてそれを実行し続けられますか?

・一時期もてはやされた分野や、鳴り物入りで呼ばれた医師も、数年経って周囲の人ががらっと変わってしまえば、邪魔者扱いということが往々にして起こりえます。その予防策はきちんとできていますか?

・総合診療は、ある程度以上の規模の施設では、専門科の積極的な協力なしでは支えられませんが、そういう院内での合意形成はきちんとできていますか?それを維持し続けられますか?


総合診療科と言うのは、「かかりつけ医」機能を持つのが大きな特徴でもあります。

したがって、ある一定の期間後に消滅してしまうようなことがあれば、それは地域にとっても患者にとっても
多大な迷惑がかかりますし、そんな「総合診療科」なら、ない方がましです。
地域で長く医療を展開してきた開業医さんがいるのですから。

逆に、臓器別専門科は、かりに突然消滅したとしても、疾患の引きつぎさえできていれば、
一時的に患者さんは困るかもしれませんが、結局何とかやっていくものです。

「かかりつけ医」は、そうはいきません。簡単に替えのきくものとして考えているなら、
それは患者を、地域を、住民を余りに甘く見すぎです。
「継続性」のない医療展開のやり方をするなら、「総合診療」を名乗る資格はありません

「総合診療」と一口に言っても、フィールドによってやるべきことは異なります。
では、どう異なるのか? それをきちんと体系化するのは、大学病院や基幹病院の
総合診療部の仕事でもありますし、どこに行ってもそれなりに役立つ
「フィールドを選ばない」医師の育成が、総合診療系医局の役割かと考えます。

たとえ2~3年ごとに医師は交替しても、引き継ぎをきちんと行い、
均質な医療を提供し続ける、それは研修体制を伴ったドクターバンクの強みです。
「北海道家庭医療学センター」などはそれを実践しているようですし、
端で見ていて本当にうらやましくなります。私の研修医時代にはなかったものです。


さて、結局「総合診療とは何か」という疑問に、私は一言で明確に答えることはできませんでした。
11年間「消化器・一般内科」をやっていた私が突然何のバックボーンも研修もなく、「総合診療」を
名乗った(名乗らされた)ことが、いかに愚挙であったのかを証明したに過ぎないのかもしれません。

ただ、一つ確かに言えること。

「総合診療」とは、ただのツールでしかありません。
そしてツールとは、それを使用する人間によって生かされるものです。

ここを履き違えてはならないと、それはこのエントリーを作成する過程で学びました。

ここまで駄文におつきあいいただき、本当にありがとうございました。

引き続き、「本物の総合診療医」の皆さまからの、辛辣なご意見、お待ちしております。

総合診療って何だろう(7)~基幹病院、大学病院の場合

こちらも自分には経験がありませんので、医学雑誌や人づての聞きかじりになってしまいます。

色々な基幹病院や、大学病院に「総合診療部」が出来てきました。
しかし、「総合診療科」ではなくて、この規模の施設の場合なぜか、「総合診療部」の場合が多いです。

道内で言うなら、札幌医大地域医療総合医学講座・旭川医大総合診療部や、市中病院では手稲渓仁会病院や勤医協中央病院、江別市立病院などが有名どころです。

原則的には前回挙げたような中規模病院で行われているような業務にプラスして、
・若手医師・研修医の教育、プライマリ・ケア医、ホスピタリストの育成
・総合診療の分野に関する研究活動
・広域医療の元締め的存在(ドクターバンク的役割)
・地域における診断困難症例の最後の砦

というような役割が期待されているのかと思われます。

ただ、惜しむらくは、なかなか専門科との連携がうまくいかなかったり、周囲より存在意義を
問われてしまう例もあるようです。
北大総合診療部などは、「医療システム学」に改組されてしまったようですが、
その関連もあるのでしょうか? 私は全くわかりません。

ただ、中規模病院との違いは、これだけの規模の病院ですから、総合診療分野のトップは
それなりの人材が就くはずなので、一度病院に組織が出来上がってしまえば
あまり病院トップの意向でガチャガチャ動かされることは、中規模病院よりは少ないかと思われます。
(これもあくまで推測ですが…。)

私の考える理想は、こういった場で育てられたプライマリケアや総合診療・家庭医学の専門家たちが
中規模病院の総合診療のトップに立ったり、開業して地域医療のリーダーシップをとっていくことかと
思っています。

(結語へ続く)

総合診療って何だろう(6)~中規模病院(50~200床)の場合

では、中規模病院 50~200床程度の病院での「総合診療」とは…。

今の自分の仕事にもかかわるところなので、筆(キーボードか)が先走ったりきつい言い方になったら
すみません。

さて、この規模の病院なら、大抵はある程度の専門医療を行っているはずです。
おおむね、消化器・循環器・外科くらいはあるでしょうか?

あとは、耳鼻科・眼科・皮膚科・泌尿器科などの「マイナー科」もこのレベルの病院では
常勤医がいても一人か、あるいは出張医対応だったりする場合が多いです。

それと同時に一般内科もあるでしょうし、あるいは消化器や循環器の専門家が
一般内科も同時に診ているパターンも多いでしょう。

ただ、内科でも全分野をカバーするには足りない…。

そういう施設に総合診療科を作ったら…

期待される業務としては、
・初診患者の振り分け ・各専門内科医がカバーできない内科疾患の外来・入院診療
・マイナー科疾患の対応(場合によっては専門医出張日までの経過観察入院なども…)
・多科にまたがる疾患を持つ患者さんの管理 ・生活習慣病などの管理
・健康診断 ・在宅患者往診 ・各専門科からのコンサルト業務(不明熱の検索など…)
・感染症への対応 ・内科系救急疾患の初期対応
・精神科のない施設であれば心身症への対応

…など、どうしてもいわゆる「すきま産業」的な意味合いが強いです。

しかし、各専門科からのコンサルトなど、「全身を診る」ことを要求される場合もあり、
さらには外来では、開業医によるフォローを好まない患者さんや、
専門科外来受診のために内科通院フォローも病院でと希望する患者さんへの対応も要求されます。
専門医でありながら「かかりつけ医」機能を果たす医師も多いです。

さらに、入院では、hospitalistという役割も期待されています。
「病院で入院医療を行う『病院総合医』」と解されています。
ここに関しては全く聞きかじりの分野でしかありませんが、
アメリカなどでは、患者さんの入院管理はこのhospitalistが行い、
専門医は手術などの専門医でなければできない高度な医療のみを行う、
というやり方が一般化されてきているのだそうです。

入院治療が終了すると、外来通院治療へつなぐための福祉・保健などの社会的な
アプローチまで行うのだそうです。

実際にそういう役割を負ってきた医師は日本にも多数いると思いますが、
それが専門分野として確立はされていません。

そういった医療を実践する場が、中規模病院における「総合診療」なのかもしれません。

いずれにしろ、こういった場で「総合診療」を導入するなら、
要求される業務内容が各施設ごとに異なるわけですし、
まずトップがきちんと総合診療科を病院内でどの位置に置くか…というビジョンをきちんと
持たないといけないわけです。

そうでなければ、この規模の病院における「総合診療科」は、
単なる「雑用何でも屋」や、体のいい「人の嫌がる仕事の押し付け先」になってしまいます。



誤解を招きそうなので付け加えますが「人の嫌がる仕事」とはなんとも失礼な話です。
病院の仕事である以上は患者さんに関する仕事であり「嫌がる」とは本来あってはならないことです。

しかしながら、内科・外科・小児科などのメジャー医師はそれぞれに専門があり、
たとえば消化器内科は午後は大腸内視鏡や特殊検査があったり、外科は
午後は手術の時間だったりするために、大体ある程度以上の規模の病院では
午後には外来をやっていません。しかし、「私は午後でなければ来られない」という
患者さんもいるので対応しなければなりません。

こういう「病院の機能を理解し、運営に協力しようとしないわがまま患者さん」は、
往々にして午後の診察を要求します。
更に、午後診を正式にやっている施設でも、午前に比べると通院の仕方が不適切だったり、
服薬がいい加減だったり、無理な要求をして断られると怒りだす「クレーマー」が多いのが特徴です。

こういった患者対応は、専門医は検査・手術など他の仕事があるので通常なら、
(手の空いている)一般内科医や、研修医などが出てくる場合が多いのですが、
「総合診療科」のある病院の場合、その医師が当てられることが多いです。

あとは、「慢性期のリハビリ」や「社会的入院」の管理。

これは急性期でまさに人の生き死にに直結するような状態を多く扱っている
内科系・外科系医師にとっては大変に煩わしいものですし、
退院後のこと(施設入所や福祉資源の活用など)といった、通常どう考えても
専門医がやるべき仕事とは言えないような仕事も抱えることになります。
退院に持っていくのも一苦労です。
(そもそも社会的入院を希望する患者家族の場合、現在の急性期病院は
社会的入院の場ではなくなってしまったことを「知らない」「理解できない」場合も多く、
それゆえ退院の説明に際してはトラブルも頻発する。)

で、おのおの専門を持つ多くの内科系・外科系医師は、こういった仕事は
「本来自分たちのやるべき仕事ではない」と考えているわけで、
だからこそ疎ましがられるわけです(ことの正否はともかく)。

で、そういう仕事が「得意とされている」総合診療科に回ってくるわけです。


半分ぐらい愚痴になってしまいましたが、
この規模の施設における「総合診療科」のすわりは、それだけよろしくないのです。

総合診療科を「総合診療」という専門分野でなく、
「雑用何でも屋」としか考えていない、
勉強不足のトップや病院管理職が未だに多いためと考えています。

せめて自分たちが使いこなせないものは雇わないとか、
使いこなせるような指導力・インパクトのある人間を管理職に据えるといった
程度の謙虚さくらいは持ってほしいものです。

総合診療って何だろう(5)~有床診療所~小規模病院の場合

こちらのエントリーも、開店休業状態になっていました。

実は来年3月で、「総合診療」をやめて、「一般内科医」に戻ることができそうです。
とはいっても、赴任先の都合上、今よりずっと幅の広い診療をしなくてはならなさそうです。

そっちの方がよほど本物の「総合診療」にやっていることは近いのかな…と考えてしまいます。

概念を理解もせずに「ノリ」だけで標榜してはいかんということなのでしょう。



さて、前回は一人診療所の総合診療について述べたわけですが、
今回は入院を受けている有床診療所~50床程度の小規模病院についてです。

この規模の施設で総合診療を実践しているのは、我が北海道の南部に位置する、
松前町立病院が代表的、というかモデルケースになるのではないでしょうか。

いろんなバックボーンやサブスペシャリティを持つ医者が複数集まって、
全員で「総合診療」を標榜しているということです。

ここの施設の凄いところは、医者の能力にはそれぞれ違いがあることを
きちんと認識した上で、集団でそれを補う努力をしつつ
病院全体として、「総合診療」を実践しているところです。

「JIM」という総合診療系医学雑誌では院長自ら「何でも科」と称していました。

外来における、患者・疾患を選ばない初期対応、後方病院との連携、
チームの知恵を持ち寄り全身のみならずbio-psycho-social modelを用いた全人的診療
そして「かかりつけ医」機能。

この体制は、現在の僻地の医師不足に対応する一つの答えと考えています。

私もこの病院の内情を知っているわけではありませんが、
いわば医者としては野武士集団になるわけでして、
そういう集団をきちんと一つの病院、一つの科、一つのチームとして
まとめているのなら、この院長の管理能力にこそ、
僻地で行う医療のエッセンスが含まれていると思います。

ただ、多くの施設ではこういった体制は、うまくいきません。

それは、ただでさえ「我の強い」人たちである臨床医の集団が、
専門も出身大学も違う中で、
お互いの能力を補完しあいながら行う「チーム医療」ができるか?
という根本的な問題にぶつかるからです。

こういった人間関係の崩壊が、実際地域医療の崩壊に即つながっていくさまを
あちこちの施設で見てきました。

集まった医者の人柄、
それと院長のたぐいまれなる管理能力(たんに高度の医療を提供するというのではダメ)、
この2つがそろわないと、こういったチーム医療はうまくいきません。

ここは現場の人間に大いに反省すべき点があるのではないかと、
私は自戒も含め、そう思っています。


私もまだまだ勉強不足、まがいもの「総合診療」を内心忸怩たる思いで標榜しています。
引き続き、本物の「総合診療医」の方からのご意見をお待ちしております。

総合診療って何だろう(4)~一人診療所の場合

 このエントリーもすごく久しぶりに手をつけます。

 (3)をアップしたのが5月末であり、再度読み返してみると、循環器内科の常勤医が不在になったり、状況変化が多少はあったわけです。

 わが勤務先病院も、外科を中心に入院患者さんが急増し、売上的にも前年をはるかに上回りそうな勢いです。そのおこぼれにあずかる形で、「総合診療外来」の受診数も、わずかながら伸びてきてはいます。

 「急伸」しない理由はとても簡単で、来年度以降の状況が不透明なままという理由で、患者さんの継続フォローを原則お断りしているからです。我々の施設は、3年前、および5年前に内科縮小→壊滅寸前まで陥り、結果ほとんどの定期通院患者さんを地域開業医の先生方にお願いした経緯があります。

 そういった患者さんが、当院でのフォローを求めて戻ってくるパターンも多いのですが、150床もの病院にたかだか中堅の一般内科医がひとり増えたくらいで何ができるでしょうか。

 実際に、道庁としては、現在の当地よりはるかに医師不足が深刻な地域への派遣を、現在進行形で継続している状況です。

 なので定期通院の患者さんを受け入れたところで、来年3月にまたもとの木阿弥に戻る可能性が現時点では高いのです。それでは医療現場も患者さんも混乱させてしまうだけなので、転医希望は原則受け入れていない、そんな次第です。

 そういう意味で、「医療の継続性」を考えると、私が北海道から派遣されたことでむしろ地域住民に混乱をきたしたのではないかと、そんな思いまで抱きながら仕事をしている、そんな毎日であります。



 さて、前置きが長くなってしまいましたが、「総合診療」一人診療所モデルが一番しっくりと来ます。もともとの「総合診療」を必要とするニーズの源が、もう数十年来問題になっている「へき地」の医師不足であり、「無医村」だった場所であるわけで、この平成の世に至っても、地域の医療を1名の医師を数名のスタッフで守っているところも数多くあります。

 こういったところで求められるニーズは、平たくいえば「何でも屋」です。風邪・軽度外傷から、多発外傷・心筋梗塞まで、なんでも来ます。多くが小児の対応も行い、人によっては妊婦さんまで診る場合もあります。

 よく言われるのが「どんな病気でも診られる」ということなのですが、確かにそういう一面も否定はしませんが、そんな能力を持った医師は世界のどこにもいません、多分…。

 あくまで、「よくある疾患」と「見落としが致命的となる疾患」をカバーしておけば実は十分なのであって、実は「何でも診られる」のが重要なのではなく、「どんな患者さんが来てもとりあえず診る」というスタンスが要求されるのです。

 疾患的にカバーできないのは、逆を言えば「まれな頻度であり、かつそれほど緊急性のない疾患」ということになりますが、それはどうするか。自分の得意分野であればそのまま診ればいいし、不得意と感じたなら、後日の専門医受診を勧め、お手紙を作成するのが仕事、ということになります。

 こう書くと「お気楽」ととられがちですが、一人診療所で、普段誰の指導もチェックも受けられず、医療判断を繰り返すことの恐怖感は実は私もわかっているなどとはとても言えません。

 多くの一人診療所の先生方(開業医の先生も含め)は、基本的には周囲が考えるよりも勉強熱心である場合が多いです。そして、開業医の先生方の多くは、もとは勤務医であり、専門を持った病院専門医であった場合が多いです。もちろん全てではありませんが。

 ただし、一人であるがゆえにフットワークも軽く、在宅医療や予防医療に力を入れている先生方もたくさんいらっしゃいます。そういう強みもあります。

 多くの一人診療所では、その専門領域、得意分野に応じて「~科」と標榜しています。一般的には「内科」「外科」などの一般的な科が多いのですが、あらゆる健康問題に対応するということを前面に押し出す意味で、「総合診療科」を標榜している一人診療所もあります。以前話題になった村上智彦医師の率いる夕張市立診療所がいい例です。

 医師個人の「そうしたい」という要望や興味よりも、「そうせざるを得ない」というニーズから出来てきた部分が大きいといえます。

 このモデルのいいところは、あらゆる健康問題に「対応が可能」というところではありますが、反面あらゆる健康問題に「対応しなければならない」ことの裏返しでもあります。

 以前、どこかの新聞記事で、一人の総合診療医がいれば、循環器・呼吸器・消化器などの分野の患者さんを全て一人で診られる…と書いていましたが、そんなに甘いものではありませんし、臓器別専門を全てまとめて一人で診る「何でも屋」という解釈にはやはり無理があると考えます。

 ある後輩医師のことばを借りれば、「何でも診ている」のではなく、「何とかしている」のが実情です。

 実際、地域の診療所にかかりながらも同時に都会の専門医に受診している患者さんも大勢いらっしゃいます。その多くが、その必要があって受診しています。

 地域の診療所、小規模医療機関の医師は、じゃあ何をすべきか…。

 患者さんを一個人としてとらえ、個人のあらゆる健康問題…さらに社会的・精神的問題までもを把握し、必要に応じて適切なマネージメントを行うことが主たる仕事となります。これには、複数の医療機関の間をとりもつ調整機能も含みます。そのことがいかに大切か…。

 普段遠くの医療機関にかかっていて、地元医療機関を利用していない方がたまたま急病になって救急車で地元医療機関にかかった場合、どれだけの混乱をきたすかを考えれば容易に想像がつきます。これが、複数の健康問題をデフォルトで抱えている高齢者の場合であれば、なおさらのことです。

 すごく乱暴な言い方をすれば

、「可能な限り患者さん(のみならず患者予備軍、つまり全住民…ですね)の全てを把握し、必要に応じて「主に」健康問題への介入を行う」

のが地域の一人診療所医師の仕事…と認識しております。

余談ですが、私が外来で患者さんに「ドクターショッピング」は避けるように強くお話している最大の理由が、これです。外来主治医に外来主治医の機能を果たせなくするようなやり方が、賢い医療機関の使い方とは到底思えないからです。

 次回は、また例によっていつになるかわかりませんが、有床診療所、および小規模病院の話をしたいと思います。

 識者の方・一般の方のご意見も、引き続きお待ちしております。

 あくまで一個人の意見であり、100%正しいとは限りません。各々が自分の頭で考えることが大切と思っています。

総合診療って何だろう…?(3)

さて、前回は、「総合診療とは何でないか?」ということで考えてみたわけですが、

現在自分は、150床の病院で、「総合診療」という枠で診療活動を行っています。
(実際に「総合診療科」という科を標榜しているわけではないので、あくまで正式には内科なのですが…)

この「総合診療」という言葉を見て、「総合的に診て欲しい」という患者さんも散見されるようになってきました。しかしながら、現実は大変申し訳ない限り…なのです。

現実に自分(内科)ともう一人の外科医との2人グループで「総合診療科」として行っている仕事は…

・常勤医のいる消化器内科・循環器内科以外の領域の一般内科疾患の診察およびフォロー(なので私が3月までやっていたバリバリの消化器診療は、現在は封印している次第です…)

・出張医体制の呼吸器内科・神経内科・血液内科については、必要に応じて専門医への橋渡し。多くの場合はそのまま出張医の専門外来フォローとなるが、出張医不在時の緊急対応も行う。

・出張医体制の皮膚科・耳鼻科・泌尿器科疾患については出張医が不在時には応急処置を行い、必要に応じて専門外来につなげるか、急を要する際には他院への紹介を行う。

・外科医がメインで行っている人工透析医療のお手伝い(手術日に当たる曜日など)

・その他、患者さんも外来受付の看護師も何科に受診したらいいかわからない状況の患者さんの初診対応ならびに必要に応じた専門医への振り分け。

・時間内だが他科の受付が全て終了した後に来院して、誰も診る医者がいない患者さんへの対応(H23.7.26追記)

・肺炎、糖尿病、尿路感染症や、頭部外傷の経過観察入院といった、専門医不在の領域の入院担当。

・リハビリ目的や、在宅介護困難例などの、社会的要素の強い入院の担当。

・悪性腫瘍などの予後不良疾患の緩和医療、末期医療、お看取り。

・成人の各種予防接種や(集団でない)個人健康診断


ここまで見てわかるとおり、我々の行っているのは主に

「○○の専門医が不在の領域の診療」「専門医療の谷間を埋める医療」であって、

いわゆる「穴埋め診療」というのが実際のところです。


なので、基本的には外来でやっていることは、開業医さん以上のものでもありませんし、一般内科以上の特別に「総合的」なことをやっているわけではありません。

そもそもが、「総合的に診る」などということは臨床医ならだれでもできなければならないことで、ことさら強調することではありません。

私は消化器疾患が得意なので(封印中ですがwww)、腹部症状に例えますが、消化器が専門だからといって腹痛の患者さんの消化器だけしか診なければ、腹部大動脈解離や、腹痛が主症状の心筋梗塞を見逃して、患者さんを死なせてしまいます。尿管結石や、ごく初期の帯状疱疹も見逃されてしまいます。

別に「総合診療」の枠でなくとも、もともと「総合的に診る」ようには心がけていたわけで、特別に何か付加価値を加えているわけではありません。

あくまで院内の「穴埋め診療」のニーズから生まれた「総合診療」であり、いわば医師14人で各科専門医療を成立させるための「捨て石」と思っていただければわかりやすいかと思います。

まあ、穴埋めには穴埋めの意地がありますし、何よりも患者さんに不利益を与えてはいけませんので、決していい加減にやっているわけではありませんし、ニーズがあって呼んでいただいているわけですから、決して「不要」というつもりはありませんが…。


で、現在北海道には「総合診療科」「総合内科」を掲げている施設が、自治医大第一期卒業生を教授に迎えた札幌医大地域医療総合医学講座を筆頭に、江別市立病院、勤医協グループ、手稲渓仁会グループ、日鋼記念病院、松前町立病院、むかわ町立穂別診療所、夕張市立診療所などたくさんあり、それらの施設ではまさに本物の「総合医」「総合診療医」「プライマリケア医」たちが患者診療に学生・研修医教育にと、日々多忙な中頑張っており、また地方の医療を支える貴重なドクタープールとしての機能を維持しているわけです。(実は私もこれらの施設の内情を知っているわけではありません…。異議あり!というご意見も是非お待ちしています。自分の勉強にもなりますので…)

それらの立派な施設に伍して我々の「穴埋め診療」を「総合診療」などと、とても恥ずかしくて大声では言えません。本物の「総合診療を専門分野とするプロ集団」の先生方に失礼この上ない、というわけです。

さて、上記の如く一人診療所から数百床の大病院にまで「総合診療科」が存在するわけですが、その果たすべき役割は、施設によって微妙に異なります。

次回は施設の性格や規模によって要求される「総合診療科」の役割について、考察してみたいと思っています。

私自身、体系だった総合診療の訓練を受けてきているわけではありません。本当に勉強になりますので、是非、「本物の総合診療医」の先生方からのご意見をお待ちしておりますm(__)m

総合診療って何だろう…?(2)

「総合診療科」を実際に科として標榜しているわけではありませんが、
そういう名目で診療に当たっているにもかかわらず、
未だ、自分の中で総合診療(医)とは何か…という問いに明確な答えは出ていません。残念ながら…。すごく難しい問いです。これ。



しかし、wikipediaではありませんが、「総合診療(医)とは何でないか?」という問いにはある程度お答えできるかもしれません。


いくつか、思いつくまま列挙します(あとで追加するかもしれません…)



・総合診療(医)とは、来てくれた患者さんには誰でも対応するが、だからといっていわゆる「何でも屋」ではない。
・総合診療(医)とは、心療内科や精神科の専門家ではない。
  (逆に心療内科や精神科の専門知識をベースに総合診療を診るのはありと思いますが、少なくとも私はそうではありません。)
・総合診療(医)とは、単なる「振り分け外来」ではない。
  (しかし「振り分け」機能も、総合内科の大事な役割の一つではあります)
・総合診療(医)とは、全ての患者に「総合診療医ドクターG」のような診療をしているわけでも、またそれが現実的に可能なわけでもない。
  (ただし、当然それが必要な患者さんにはそういうアプローチはしますが、それは総合内科に限らず、全ての臨床医ができなくてはならないことです。)
・総合診療(医)とは、どんな患者さんでも診るからといって、各臓器の専門家の判断を代行したり、修正したりするものではない。
  (ただし、サブスペシャリティといって、他の臓器別専門を持っている医師についてはこの限りでない。私の場合は消化器系…)
・総合診療(医)の仕事は、単なる「穴埋め」ではない。
  (ただし、一定規模以上の施設で専門家不在の領域の穴埋めをするのは役割の一つ)
・総合診療科とは、「総合心療科」ではない。
  (これは誤植です。素で間違えられたことがあるし、確かに心気的訴えの患者さんも少なくはないけど、断じて「心療」ではありません!)

また、思いついたら、追加します…。

本物の総合診療医の皆さんからのご意見も、お待ちしております(自分の勉強にもなりますので…)

総合診療って何だろう…?(1)

あちこちの大学で「総合診療部」が創設されるようになって久しいです.

それにやや遅れる形で,単独で研修医を受け入れるようなレベルの大病院で
「総合内科」ができてきました.

また,最近では小規模病院で,「内科」「外科」といった分野別診療が
成り立たないような場所で,「総合診療科」が創設され,
基本的に来た人は「とりあえずまず診る.それぞれの得意分野をもちよって
みんなで相談しながら診る」というスタンスの施設もあります.

NHKハイビジョンでは「総合診療医 ドクターG」なる番組も放映されました
(まあ,これはどうでもいいですが…)

私自身も,現在は一般+消化器内科としての診療をしていますが,
4月からことによると「総合内科」での診療になるかもしれません.

総合診療というと,一般的なイメージとしては…

・振り分け外来
・専門診療の狭間にいる患者さんを診る
・心身症のフォロー
・全人的診療
・なんでも屋

といったところでしょうか?

「総合内科」って一体何なのでしょう?
実は私の中でも漠然としていて,これ,という答えが出ない状況です.

これは各種のシチュエーションで答えが異なる問題ですので,
エントリーの中でいろいろ考察していこうと考えていますが,
こればかりは私も正しい答えが出せる自信がありません.

もしよろしければ,皆様のお知恵をお貸し願えませんでしょうか?

お題は「地域社会にとって必要とされる『総合内科』像」です.
「『総合内科医』像」ではないところにご注意ください.
(ことにこの分野,医者だけ頑張ったってしょうがないので…)

ご意見,どんどんお待ちしています.

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