地域医療

医師不足地域での残業時間上限緩和!?→厚労省さん、それ何の罰ゲームですか???

医師不足の地域、残業時間の上限を緩和 厚労省が提案
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181205-00000052-asahi-soci

これは明らかに愚策。

医師不足の地域にはそもそも医師不足たる理由があって医師不足なのに、
更に医師不足地域に行きたくなくなる理由を厚労省がわざわざ作ってどうする。

医師不足地域での診療が好きで、
かつては自ら望んで医師不足地域の診療に携わっていた者として断言する。

こんなもの今すぐ撤回すべきだ。
冗談じゃない。

僻地勤務の「罰ゲーム化」は頼むからやめてくれ!!

神戸大学「不適切」入試について考える

はじめにお断りしておきますが、このエントリーも含めブログの内容に関してはすべて筆者の個人的見解であり、所属する組織は一切関係ありません。

 

    神戸大:医学部推薦入試で医師不足地域受験者に加点https://mainichi.jp/articles/20181123/k00/00m/040/148000c



 一連の医学部入試「不正」事案に関連して、神戸大学で「いわゆる僻地・医療過疎地」出身者の点数を嵩上げしていたことが発表されたようですが、私としては、

よくやった!神戸大学!!

と心の底から快哉を叫びたいところです。

たしかに、「大学という教育機関」が、入試を受けたものの属性で区別・差別を行うことは良いか悪いかと言えば、良いとは言えないでしょう。

しかし、「医師という職業人養成機関」であり、地域医療を担う責任を持たされた医育機関として考えれば、これはある意味当たり前の判断とも言えるものです。

そもそも僻地・医療過疎地出身の高校生・受験生は、偏差値価値観的には大きなbehindを背負っていることはもう明らかですし、また今のところはっきりしたデータは寡聞・不勉強にしてわかりませんが、都会出身者よりも僻地出身者の方がへき地・医療過疎地の医療を担ってくれる可能性が高いと考えるのは自然なことです。

それこそ不適切かもしれませんが、家庭環境や経済環境に恵まれない人を優先して選べばもっといいかもしれませんね。大学院進学や留学なんてある程度、実家などの経済的基礎がなければできないし、そのような人は、学問的に上に行くことより収入の多いへき地や離島に好きこのんで行くでしょうから。実例はあります。私がそうでしたから。

むしろ偏差値やワンポイントの試験の点数だけで選んでいることが医者がへき地に行きたがらない原因の一つになっている可能性だってあるわけで、私の立場で言うのも難ですが、これは地域枠に奨学金を被せている自治体単位で考えてもよい政策であると思います。それを「学問の府」である「大学」が自主判断で、しかも入試点数の嵩上げという手段で、かつ明示せずに行ったからこれだけ非難を浴びているわけです。

かつて自治医大の学生時代の臨床実習中に、とある科の指導医の先生に

「うちの大学のように決められたカリキュラムをこなして、卒論もなく試験合格のみを目標に人材を作りだして輩出し、行き先もほぼ決められているなら、別に大学じゃなく医学専門学校でいいんじゃないですか? 大学を名乗るなら純粋に学問の場であるべきで、今の状況は不健全と思います」と生意気にも意見したところ、

「君は自分が患者として『大学も卒業していないどこの馬の骨ともわからないあんちゃん』に診られたいのかね?」と言われたのを思い出しました。

日本の医科大学・医学部というのは他学部と全く異なる位置づけがされています。文科省の管轄下にあり、「大学」を名乗っていますが、医師の人数調節のため入学時点から既に人数調整がされ、実質的に「職業訓練校」です。

大学とは本来「学問の府」であり、「学問の自由」の名の下、自治権も確保され、入学者を選ぶことも、研究内容も、指導内容も、そして卒業後の進路にしても全て自由なはずです。実際に多くの学部では、自分の専門分野をそのまま職業としてストレートに活かせる人はむしろ少ないとされています。それを理由に医学部を目指す人もいるくらいです。

しかし、医学部卒業生は国家試験に何度も失敗したりなどの特殊事情がない限りほとんどの人は医師あるいは医療関係の仕事に就きます。

大学医学部における医師養成には多額の国家予算・自治体予算が組み込まれており、ドロップアウトした人間は「税金泥棒」扱いされます(さすがに「一人一億」は都市伝説ですが)。「医学部はつぶしがきかない」とは使い古された表現ですが、だからこそ入学時点での人数コントロールが利きますし、大学側としては一人でも脱落者を減らすことに躍起になるわけです。そうでないと、大学が税泥扱いされかねませんから。

つまり、日本の医科大学・医学部は、「学問の府」でありながら、「医師養成専門学校」でもあらねばならないというハムレットのような状況に長年置かれてきたわけです。
そしてその時々の都合で「大学」であることと「医師養成機関」であることを使い分けることを余儀なくされたわけです。


東京医大はどうかわかりませんが、少なくとも神戸大学は、「医師養成専門学校」としての「地域で働く医師を輩出する」という社会的責任を果たそうとした結果がこれだと思いますし、

それを「不正」という一言でくくって一方的に批判してよいものなのでしょうか???

 

すでにいろんなところで「実質医局枠」と化している現行の地域枠の「運用」には個人的には批判的であるものの、これは「許される不公平」ではないでしょうか。

学問の場である大学入試に属性による差別を持ち込むことが愚かであることは否定しませんが、「政策」「施策」として考えたとき、「純然たる公平」イコール「社会正義」とは必ずしも言えなくなります。そのことをよく考えるべきです。

私ごときが20年以上も前に気づいていたくらいですから、おそらく大学医学部のハムレット状態には旧厚生省も旧文部省も当然わかっていたはずで、本件については

そのような状況を長年にわたり(たぶん)わかっていながら放置してきた旧厚生省・旧文部省の責任は重い

と言わざるを得ません。

私個人としては、

・国公立医学部は全て「大学校」に組織改編し、文科省の支配下から離す。

・その上で各国公立医学部は純粋な「大学院大学」とし、そこでは学問の自由、大学自治権は全面的に保証する。(「医局人事」の問題はまた別。ここでは触れません)

 が、最もすっきりして良いとは思いますが(私立大学医学部の問題は残りますが、それは突き詰めて考えると、ちょっと大きな声では言いたくない方向の結論にしかならないので、ここでは触れません)、

いずれにしても、神戸大学が本気で僻地医療を考えてこのような施策をとっていたのであれば、その一点に関しては

神戸大学グッジョブ!

と本気で思いますし、

・医師を目指す高校生・受験生のための教育資源は大都市に大きく偏在している。

・学習能力の評価に当たって用いられる「偏差値・試験点数」は、教育資源の多寡や環境に大きく修飾される。

という現実からも、

今回の神戸大学の一件を一方的に「不正」「不適切」として、「学問」の立場からのみ断じてしまってよいものではないと私は思いました。

地域枠とペナルティについて。

折しも、東京医大の入試を巡る不祥事でネット界隈は大論争が起こっていますが、
こちらはいろんなトピックを含む大変複雑な問題でまだまだ頭がまわらないので、
本日はあえて地域枠の話です。

医学部受験の地域枠といっても2種類あります。

一つは、卒業後の義務年限を果たす代わりに授業料や生活費を貸し付け、
義務を果たせば返還免除にするという、お金による契約。(以下、貸付枠とする)

もう一つは、金銭的な援助はしないが、その地域で働くことを前提に
一般入試とは違う特別な枠で学生を受け入れるということ。

後者はとくに、北海道のように道外からの受験生を多数受け入れ、
卒業後は道外への流出が多かったようなところでは貴重な枠になっています。

その数、

札幌医大 定員110名中地域枠90名、うち貸付枠15名
旭川医大 定員117名中地域枠52名、うち貸付枠12名
北大    定員112名中地域枠5名、うち貸付枠5名
北海道「地域枠医師の配置等の考え方」より)
※上記文献では北大地域枠総数が「-」になっていますが、記載ミスと思われます。
※エントリー作成後、指摘をいただきましたが、
 北大は一般枠入学生から希望者を募る形のため、
 地域枠の定義に当てはまる学生は「0」ということのようです。

この地域枠に関して、義務に違反するとどういうことになるでしょうか。

金銭が絡むならことはそんなに難しくありません。
貸与金の一括返還を要求すれば、少なくとも法的な「オトシマエ」はつきます。
お金で契約した人に対して、お金で契約破棄のオトシマエをつけようとしている人を
止めることは許されないので、これは仕方ないことかと思います。
(それがいいことか、道義的に許されるのかどうかは、もちろん別として)

では、金銭の絡まない、単に特別枠で合格させてもらった地域枠出身医師はどうなるでしょう…。
この時点では大学を卒業し、国家試験も合格して医師免許も発効しているわけですから、
それを剥奪することはできません。

一つ考えられるのは、入学にさかのぼって入試合格から全てをなかったことにしてしまうことですが、
その場合医師免許剥奪ということにもなるので、そんなことを強行すれば
自治体と大学・文科省、それと医師免許を所管する厚労省の間で大モメに揉めるでしょう。
まず不可能な選択肢です。

次に、違約金を払わせるとか損害賠償請求という選択肢がありそうですが、
いったん違約金や損害賠償・和解金の相場が確立してしまうと、
「なんだ、お金で解決できるんだ」ということになれば
これは逆にお金持ちの子弟が地域枠で入学して、違約金を払って他県に流出してしまうという
モラルハザードを生み出しかねませんし、
それ以前に大学入試合格とお金を交換可能な価値とみなしてしまうという面で大変不健全なやり方です。

そんな中で、地域枠を放棄した研修医を引き取った病院に補助金や研修医定員の削減等でペナルティを課すやり方 が議論されています。

これに関しては正直、よく考えたなとは思います。

いささかやり方がヤクザチックで正直自分の感情的には気に入らないのですが、
地域枠出身医師個人にペナルティを課すことの法的リスクを考えると
他にやりようがなかったのではないでしょうか。

個人的には、地域枠の真価は
彼らが義務を終えて総合医や家庭医、専門医、指導医として独り立ちしたときに
それでも地元県のために頑張ろうと思ってくれる人がどれだけいるかということで
示されるのではと思います。

別にみんながみんな田舎で働く必要はありませんし、
ことに北海道の場合は札幌や旭川で大病院の部長や教授になって
地域の医療を支えるのも立派な地域枠義務終了後の生き方と思います。

北海道の地域・地方センター病院クラスの病院は
内科外科などのメジャー科や、皮膚科・泌尿器科などのマイナー科にかかわらず
「専門医」不足に大いに喘いでいます。
これら中規模病院で働く専門医がしっかりした体制でなければ
周辺の小病院・診療所は頼る寄る瀬がなくなってしまいます。

ことに心臓と頭の緊急に最前線で対応、かつ病院到着までの時間が予後に直結する
循環器内科と脳神経外科の地方での空洞化は北海道では深刻な状況ですし、
高齢者の多い地方を束ねるセンター病院や基幹クラス病院での
整形外科や泌尿器科医師の不足は大きな問題となっています。
産婦人科医師の偏在による地方のお産事情はもう言うまでもないでしょう。

北海道で医療の将来を担うことに、少しでも希望を持てるようにする。
我ら先達の大きな使命と思っています。

医師の地域偏在の問題を個人への勤務強制で解決しようとするのは悪手である。~「赤ひげ」には患者は守れても地域は守れない~

しかし…どうしてこう、へき地医療対策というと
医師という個人に制限を課したりインセンティブを与えて行かせるというが如き発想しか出てこないのでしょうね。
へき地医療は牢獄か何かなんですか?
医療過疎の原因を、そんなに医師個人の責に帰したいのですか?
医師偏在を、医師のわがままのせいにすれば解決するのですか?
ずいぶん雑なお仕事ですねえ。

同じ強制力を課すなら、
以前のエントリーに少し記したように、
個人ではなく、都市部の単独で研修も行えるような医療機関を
ドクタープールに設定して、
医師を派遣する義務を課せばいい。


以前のエントリーにも書いたが、
義務の主体は個人ではなく、組織やシステムであるべきだ。

そのような大きな医療機関の指導医クラスに、
地域の医療に造詣の深い医師が誰もいないなんてあり得ないだろうし、
(もしそうなら、研修指定医療機関を返上すべきかと…)
指導医がちゃんとフォローした上で若手医師を送り込めば良質な研修にもなるはずです。
複数医師による数ヶ月や1年ごとの交代派遣にすれば、
時を違えて派遣される医師どうしで地域に関するカンファレンスをやって
質の高い議論ができれば、
その地域の医療の質を向上させることだってできるはず。

でも、この北海道だって、似たような試みを
システムで徹底してやっているのは
北海道家庭医療学センターも含め数えるほどしかないだろう。
(他にあれば是非教えてもらいたいです。もちろんいいことなので)

それが問題なんだろう。

へき地に人が行かないのが問題の根源なのではない。
それを後ろからサポートする体制やシステムが貧弱すぎるのです。
だから行きたくてもおいそれと行けない。

へき地の医療を生身の人間であって家族もあれば病気にもなる個人の肩に委ねる体制を
ますます強化して一体どうするつもりなのか。
地域に一つしかない開業医や診療所・病院が
1人ないし数人で24時間365日を守る「赤ひげモデル」から
未だに脱却できていない。

もう「赤ひげ」は無理だって、故 村上智彦先生も何年も言い続けてきたのに。

それが検討会の識者たちの危機管理意識と言うのなら悲しいにも程がある。
「赤ひげ」がどんなに身も心もすり減らして頑張ったところで
地域の危機管理はできない。物理的にも精神的にも無理。


それどころか、「赤ひげ」の肩に全てを委ねるごときは却って危険ですらある。

「赤ひげ」には、患者は守れても地域は守りきれない。

へき地医療を「牢獄」化してしまっている原因の一つは、
その「発想の貧困さ」であることに気づいて欲しい。

少なくとも、個人を悪者に仕立て上げる論調はやめましょう。

システムでやりましょうよ、システムで。

【訃報】村上智彦先生

まさかの訃報でした。

私が自治医大在籍時、もう20年も前になります。
当時地域医療学教室の助教授であった奥野正孝先生のゼミに入っていたことから、
教室で机や鍵を借りて出入りしていたのですが、
ある日、北海道訛りの一風変わった、当時シニアレジデントだった先生をお見かけしました。

聞くと、歌登出身で、いずれ北海道に戻って医療をやるんだと、
北海道の地域医療を支える体制は今のままではダメだ。
医療で街づくりをやるんだと、
「北海道が好き」「医療で街づくり」
この2点で意気投合し、仲良くさせていただきました。

医師になってから、SNSで再会したのは、すでに道内のあちこちで戦っておられた時でした。
Care Do 北海道の開催をきっかけにやっとお会いすることができましたが、
まあ、何も変わってないというか、
却ってこっちが変わってしまったのを見透かされないかなくらいに思うくらいでした。

その後、村上先生はコミュニティドクターとして、
私は医師不足、崩壊寸前あるいは一度医療崩壊してしまった場所を
転々とし、離島医を経て行政へ。

村上先生は「官でも民でもない『公』を目指す」と言われ、
私は、それならあえて「官」で頑張る、と行政に入り、
同じ目的に向かって違う方法論で頑張ることとしましたが、
それでも、時々お会いするとエールを送ってくれ、
本当に元気をもらいました。

また、村上先生のおかげで、多くの志をともにする仲間との
出会いの場もいただきました。
これはもう、感謝してもしきれません。

最後にお会いしたのは昨年秋、
旭川で入院中に御見舞に伺ったときです。
それから退院し、会って話をしなければと思っていた矢先の訃報でした。

村上先生は、「自分がいなくなってもちゃんと機能するシステムを作る」ことに
注力されていましたので、
ささえるグループの「これから」こそが村上先生の功績となりましょう。

私も、「北海道が好き」「医療で街づくり」を胸に、
北海道、そして道民のために、村上先生の夢を引き継ぎ、叶えたいと
北海道を愛する一人として改めて思いました。

夕張や岩見沢、旭川で先生が看取られた患者さんと一緒に、
遠くて近い空から、我々北海道Loversを支えてほしいと思っています。

私もあと何十年かわかりませんが、そちらに行ったら、
離島や行政での苦労話をじっくり聞いてもらいたいです。
ブログじゃ話せないネタなんて山ほどありますから(苦笑)

あえて英雄呼ばわりはしません。
ともに北海道を盛り上げたいと願い、行動した、仲間、先輩、兄貴分であった村上先生の
ご冥福を心よりお祈りいたします。

合掌

北海道地域医療研究会

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11月19日(土)に、札幌で開催されたこのイベントに、
最初の講演のみ参加させていただきました。

私自身は、この研究会の会員ではなく、
前日にたまたま研究会の開催を知り、
本庁から地域医療構想担当局長が講演をするということもあって、
それを聞きに行ったという次第です。

午後からのシンポジウムも本当は聴いて行きたかったのですが
以前からこの日の午後は娘と遊ぶ約束をしていたので、
残念ながら講演のみで失礼させていただきました。

講演の中身は、読んで字のごとしで「地域包括ケア」についてなのですが、
「地域まるごとケア」の話や、
介護予防が独り歩きしてケアの強要・押し売りになってしまう可能性について
ちらっと触れていたのが印象深かったです。

我々公衆衛生に携わる者が施策形成にかかわるとき、
データを見ながら全体最適を目指すのは当たり前のことではありますが、
公衆衛生活動の成果、ないしは影響は、最終的には個々の住民に及ぶものであることは
私達が仕事を進めていく上で、絶対に忘れてはならないことだと思います。

そんなことを考えていた週末でした。

さて、週も明けます。
今週も一週間、頑張りましょう!

医師の飲酒運転事案と「一人医長万年オンコール」問題、そして診療サポートのあり方について(2/2)

承前

ところで、この医師は自宅から徒歩では通勤が難しいところに住んでいたようです。

たしかに地図を見ると、
報道上この医師の自宅のあるとされる対馬市厳原町から、対馬病院までは10kmくらい離れています。

少なくとも患者急変に際して歩いて登院するのはちょっと無理です。

ただ、患者の急変に際して夜間でも呼ばれる体制をとっていた以上、
飲酒していない時の緊急時は普通に自家用車で出勤していたのでしょう
(水色は筆者の推測。以下同様)
ただ、普通の人付き合いをする人であれば病院飲み会だってあったでしょうし、
そういった飲酒時を想定した対応を
本当にどうしていたか、その実態は内部の人でないとわからないでしょう。

ここが、もと離島の病院管理職を勤めていた人間としては引っかかるところなのです。

このような状態に対して、病院側は何も手を打たなかったのでしょうか?

 

必ずしも、そうは思いません。

実際に、長崎県病院企業団では、こういった場合のタクシー通勤は
認めていたようです。

ただ、では、厳原地区のタクシー会社が営業を終了する深夜3時以降に
飲酒した状態で呼び出しがあったらどうするつもりだったのでしょう?

この医師の「自宅」というのは
病院で用意した公宅なのでしょうか?

それとも自前で建てた、自分の家、なのでしょうか?

その情報は少なくとも記事にはありません。

そもそも、何故、こんな島で病院からわざわざ10kmも離れた場所から
通勤しているのでしょうか…?

で、病院サイトに戻ってみると
件の医師は「対馬いづはら病院」の次の勤務先が「長崎県対馬病院」なので
病院併合に際して10km離れた病院に異動になったものと思われます。

その際、この医師の自宅が、「この医師のもの」であったか、あるいは
「医師公宅」であったかによって、病院のとるべきであった対応は大きく異なります。

かりに所有する自宅であったとしたら、
少なくとも病院側が万年オンコール状態にあったことを把握していないはずはないですし、
仮に事務方が把握していなくとも、
病院管理職が動いて、

万一タクシーの動かない夜間に呼ばれた際の保険をかけておくべきだったでしょう
(今回の件は捕まったのがまだタクシーの動いているはずの深夜2時10分なので
 あてはまらないかもしれませんが、ではタクシーの営業の終了する3時以降は?
 という問題は残ります)

また、公宅であったならば、病院併合の時点で
新しい病院の近くに公宅が準備されるべきでしょう。

実際どうなのかはわかりませんが、何らかの事情で病院は移ったけれど、
医師の住居は移らなかった、ということだけは間違いないと思います。

その状態を病院として許容するのならば、
例えば深夜3時以降の呼び出しに備えて、
運転のできる事務職を待機させ、
公用車を出せる状態にしておく、くらいはやっておくべきでしょう。

それが「診療をサポートする」ということです。

実際、私のいた離島では、患者の島外搬送に備えて、
輪番で運転手を確保していました。
そういうことが、同じ離島の病院で、できないはずがないのです。

同じようにして対馬いづはら病院から病院併合とともに移ってきた、
自宅が厳原地区にある医師はまだいるかもしれません。そうならば、
少なくとも私がこの病院の管理職であれば、絶対にその対策はとっただろうと
もとそういう立場にあった者として断言します。
これは危機管理として前もってやっておかなければならないことです。

それができないというのなら、病院経営陣も事務方も、
「医療の何たるかをわかっていない」という批判は免れません。
厳しい言い方になりますが、
そのような経営母体に病院を運営する資格はないと思います。

件の医師の話に戻りますが、
この医師がいなくなると、
島内での放射線治療ができなくなるそうです。

困りましたね。

ただ、県の対応として、
それを理由にして情状酌量を行うことは
このご時世、絶対に許されないと思います。

「これまでの島の医療への貢献を鑑みて」とか、
「緊急で患者のためだったので」とかは、
もう現在には通用しません。
まして、この医師は検問を振りきって逃げているのです。

筋を通すならば、
まず、この医師に対する処分は県の基準に照らして
どれだけに相当するか(減給?停職?免職?)を
はっきりさせた上で、
遠距離通院の万年オンコール状態の一人医長に対する
診療サポートが、企業団として、病院として、十分にできていなかったことが
今回の事件の誘因の一つであり、
その責任の半分は企業団および病院にあることを認め、
知事、病院企業団のトップ、院長、事務長が公式の場で謝罪の上で、
処分の執行を保留する形で件の医師に診療を続けてもらうことを
理解してもらうよう県民に伏してお願いする、
これしか、この医師の残る道理はないと思います。

むろん、件の医師は、針のむしろ状態でしょうから、
残って診療を続けることそのものがもう、「ペナルティ」になると思いますが、
まあ、一定期間禁酒を命じるくらいのけじめは必要でしょうか。

もちろん、この医師が事件を起こしたことを真摯に反省し、
かつ、これまでの診療活動の実績が島民に認められており、
島民がこの医師の残留を望んでいることが最低条件です。

いずれにしても、情状酌量を理由としての処分軽減は、あり得ません。
それをやると「医師の甘えを許すのか?」という世論を惹起し
逆効果になってしまいます。

こういう田舎では
「お医者さんを守ろう」とか「お医者さんを大事にしようとかいうスローガンが
よく聞かれます。

でも、本当に守り、大事にしなければならないのは、
「医師」ではなく「地域の医療体制」であるはずです。

その一環として個人である「医師」に、
無駄な仕事をさせないとか、変な心労をかけないとかいうのがあるはずであって、
「医療体制を守る」ことは「医師を腫れ物のように扱う」ことではないのです。

まともな医師はそんなことを望んではいません。

心置きなく診療活動をできるように、
ただでさえ忙しい中で、いろんなことに惑わされずに
患者さんの命を救うことに集中させてもらいたい。
少なくともその邪魔だけはしてほしくない。
でも、診療活動のサポートはしてくれるとありがたい。

そして願わくば、田舎の医師は一人の人間であると同時に
存在そのものがまちのインフラであるという
非常に特殊な状態におかれているということを真に理解していただきたい。

ただ、それだけなのです。

それがいつの間にか捻じ曲げられ、
医師を腫れ物のように扱い、必要以上に持ち上げるような
そんな「医師過保護化」があちこちで見られます。

かつて田舎に勤務した医師としては、大いに違和感を感じます。

行政も、住民も、事務方も、
「医師の腫れ物扱い」ではなく、
ビジネスパートナーとして
「医療の何たるか」をちゃんと勉強して理解した上で
スタッフをサポートすることが、
こういった地域の医療体制を守る上で最も大切
なのだということは
強調しておきたいと思います。

結びに、先日職場で配られ、全職員に署名の上で携帯を命じられた
「飲酒運転根絶道民宣言」を提示してこの稿を終わります。

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どうしても報道記事からの推測に頼らざるを得ない部分があり、
「実情は違うよ」という部分があるかもしれませんし、
異なる意見は当然ありましょう。

是非お聞かせいただけると、私の勉強にもなります。

長文に最後までおつきあいいただきありがとうございました。

医師の飲酒運転事案と「一人医長万年オンコール」問題、そして診療サポートのあり方について(1/2)

http://www.sankei.com/west/news/160709/wst1607090069-n1.html
患者が危篤に! 飲酒検問振り切って、医師逃走 対馬、酒気帯び運転疑い現行犯逮捕

http://www.yomiuri.co.jp/national/20160710-OYT1T50037.html
酒気帯び逮捕の医師、患者危篤で病院向かう途中

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/257811
対馬の医師、飲酒運転疑い 患者危篤、検問振り切る

一応、複数の報道のリンクを載せておきます。


さて、この件を語るには大きな前提があります。

仮に人の命がかかっているといった事情があるにせよ、
飲酒運転、ましてや、検問を振りきって逃げるなどはもってのほかの行為であり、
絶対に許されることではありません。

 

この医師の行為は正当に法、および長崎県の定める条例や内規に則って罰せられなければなりません。

 

さて、この事件については、ネット界隈を見ると
・飲酒運転をした医師の責任を問う意見
・捕まえた警察の判断に対する「そりゃないんじゃないの?」という抗議の意見

の、概ね2つに分かれているように感じます。

私は医師の責任は当然問われるべきだと思いますし、
警察はあくまで自分たちの仕事をしただけです。
批難されるいわれはどこにもありません。

ところで、私はかつて離島の病院の管理職をやっていた関係上
少し、思うところがありましたので書かせていただきます。

 

この事件は、へき地・離島医療にかかわる
すごくいろんな要素を含んだ事件です。
これを一般の方にわかるように紐解くには
すごく長い文章にならざるを得ないことをご了承下さい。


まず、いろんな要素がありますので、報道や病院サイト等で活字にされていたことを
まとめます。事実と私の推測を分けるため、推測は水色を入れます。

・医師は放射線科で、いなくなると島内での放射線治療ができなくなる
  →つまり一人医長であったということ。

・当直医が対応できるにもかかわらず、担当患者が危篤状態となって呼ばれた
  →おそらくこの医師は一人医長体制、あるいは「主治医制」のために、24時間365日、
    用事などで島を出ないかぎり万年オンコール状態だったのではないか。

・この医師の自宅は対馬市厳原(いずはら)町の在住であったこと、
 そして、病院HPからは、過去、この病院が併合で出来る前に存在した
 「対馬いづはら病院」(合併に伴い閉院)に勤務していたということ
  →この医師はもともとは合併前に至近距離での通勤であったにもかかわらず
    病院併合によって異動を余儀なくされ、長距離通勤を強いられていたのでは?
    そして一人医長万年オンコールであったにもかかわらず
    病院併合時に担当患者緊急時にどうするかということが
    十分検討されなかったのではないか?

・長崎県病院企業団では、このような場合原則タクシー利用を義務付けている
  →そもそもタクシーが動いているのか?という疑問が湧いてくるが
    http://www.tsushima-net.org/access/in.phpで確認してみたら、
    厳原港周辺のタクシーは深夜3時まで営業となっていて、
    報道によればこの医師が飲酒運転をしていたのは午前2時10分なので、
    公にはタクシーは動いていたはずの時間である。
    (ただし、田舎の常として、本当にその通りタクシーが動いているのかどうかは
     たぶん地元民じゃないとわからない)

この事件に関する論点は、医師の飲酒運転の是非を置いておくと、

1,一人医長万年オンコール問題
2,医師の住宅の立地と、緊急時の通勤手段の問題

の2つとなるかと思います。

さて、私自身もいろんなところで経験した
「一人医長万年オンコール」

このブログでも何度となく問題にしてきました。



そもそも、「オンコール」とは何か?

「病院」と名のつく施設には必ず当直医が夜間、休日にはいます。

これは、

医療法第十六条に

「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない。」と
定められているからです。

この当直医は通例、救急患者さんの診察のほか、
院内に入院している患者さんの急変にも対応します。

ただ、じっさいに院内の入院患者さんに急変が起こった際に、
たまたま主治医が当直であれば
適切な対応もすぐできるのでしょうし、
急患も、たまたま当直医の専門の病気だった場合はまあ「ラッキー」なのですが、
そうじゃない場合の方が当然多いわけで、
そんな場合は初期対応は当直医がするにしても、
その後の専門的診療についてまでは責任を負いきれません。

もちろん、翌朝や週末なら月曜の朝まで様子を見ていいような状態ならいいのですが、
そうでなければ、至急で専門医に診せなければいけません。

そのときに電話で呼ばれるのが「各科オンコール」と呼ばれる当番医師です。

これが輪番でまわせるだけの人数の医師が各科にいれば
何の問題もないし、「オンコールの時くらい、酒がまんしろよ」でいいのですが、
田舎や離島の場合は、その科の医師が1名しかいないということも多いのです。

いわゆる「一人医長」です。

とくに耳鼻科や眼科、皮膚科などの「マイナー科」と呼ばれる科では
この「一人医長」状態は多く見られるのですが、

こういった科でも、患者さんの命に関わる緊急事態はありますし、
入院患者さんを持てば別に緊急でなくても、いつ電話がかかってきたり、
呼ばれたりするかわかりません。
また、科に何人も医師がいたとしても、
例えば「内科」で内視鏡ができる人が一人しかいなければ、
吐血の患者さんが来ればやっぱり24時間365日呼ばれます。

これは、へき地離島じゃなくてもある程度の規模の病院であっても
そういう事態はあり得ます。
新たに人員補充がなされるか、その病院を辞めない限り、
交代要員が確保されたとき以外は24時間365日いつ呼ばれるかわからない状態が半永久的に続くのです。

これを「万年オンコール」と呼びます。

この「一人医長万年オンコール」の多くは、その見返りはありません。
せいぜい、呼ばれた実働時間に時間外手当が出れば御の字です。
正式な当直でないかぎり時間外が出ないなんてのは当たり前にあります。

また、一人医長が任地を用事や休暇で離れる際のバックアップ体制の整備にも
病院の経営母体によっては消極的なところもあります。
だから、とくに産婦人科や小児科の一人医長などは、
任地を滅多に(年単位で)離れられない医師なども現実に存在すると聞きます。

この手当の出ないオンコールの医師がもし、医療事故を起こしたら、
報酬の実質ない仕事に対して、結果責任を誰が負うのでしょうか?

そんな議論がされたのを、私はついぞ聞いたことがありません。
プロの、ましてや「専門分野」の仕事にfree-rideしている、
これが日本の医療の実情なのです。

では、そういう医者は、酒なんか一滴も飲んじゃいけないのか…?
結論からいうと、今のご時世では、やはり飲酒は
任地を離れて絶対に呼ばれない時、あるいは交代要員がいるとき以外は
避ける「べき」と思います。

ただ、夜間休日の医療体制を整える責任は本来「院長」にあるのであって、
またそのための体制を整備する責任は病院の設置者や事務方にあり、
それを無視して、現場の医師のみに「べき論」を押し付けるのは余りに不義理であると私は思います。

こんな集団無責任状態だからこそ、
「一人医長の万年オンコール」医師の飲酒だって、見て見ぬふりをするしかないと思います。
(もちろん深酒をしすぎて、実際の診療に支障を来さない限り…ですし、
 やっぱり飲酒運転は絶対にしてはいけません。
 こういう医師が飲酒運転をしなくて済むようにするにはどうしたらよいか…次で触れようと思います)

ここで中締め。
一人医長万年オンコール状態にある医師に対しては、
病院あるいは経営母体の責任において、
休養を定期的に与えるシステムを構築すべきであり、
その責任を果たせない病院や自治体は、
安易に24時間365日体制を謳ってはならない。

そう私は思います。

長くなるので一旦締めます。
この問題は次へ続く

 

ああ、松前…

※本エントリーの記載は、http://drsammy.cocolog-nifty.com/haguredoctor/2010/11/post-17bc.htmlでも触れておりますように、所属組織とは関係のない、個人の見解であることを予めお断りいたします。内容に関するご指摘、お問い合わせ等は、下の方のリンクにあるメールか、コメント欄にお願い致します。

 

ブログ「ERから地域医療へ」より「次へのステップ」
https://from-er-to-local.blogspot.jp/2016/06/blog-post_17.html

 

道内の実在の病院のよくない出来事について論評するのは、

今の立場上なかなか難しいこともあるのですが、

この件は、かつてブログにアップしたこともある以上

触れないわけにはいきません。

(以前のエントリーは時間が経過していたので非公開にしていました)

 

いろいろな意味で残念な結果になってしまいました。

ある意味、運命だったのかもしれません。

 

ただ、地域医療のカリスマ的存在であり、

多くの若手医師を育て上げてきた木村院長先生が松前を去る決意をしたというのは

事実として残ります。

再び崩壊ドミノが起こるのも、避けられないでしょう。

 

どっちがいい悪いを論評するのは、立場上避けますが、

自分の立場をかなぐり捨ててあえて言うならば、

北海道の別なところで、また種を蒔き続けてほしい、

そういう風にも思います。

 

冒頭に挙げたブログのエントリーのコメント欄からの引用です。

「bestではなくとも、betterな方法で医療の質を担保する方法(医師もその地域に住む人も)はやはり、同じグループでその地域をカバーするということかと考えます。1ヶ月単位、一週間単位、曜日ごと、いろいろな形態があると思いますが、「継続性」をグループで形成することが最低限必要かと思います。(一つの例が榛原病院のER応援)同じグループ(病院)からの派遣であれば互いに顔も、性格もそれなりに理解し合っているので何故その診断と治療を行ったのか解りやすいと思います。」

これ、私と全く同じ考えです。

どんな超人であれ、個人の肩に地域の安全確保を背負わせるのは無理です。

そこを起点に、「維持可能な体制」の考え方をしなければ、いつまで経っても

同じことの繰り返しが起こると思います。

 

厳しいですね、いろいろ。

北海道の救急…(「H27年版「救急・救助の現況」より

平成27年版の「救急・救助の現況」が発行されたそうです。

http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList9_3.html

ちょっと長くて読むのに疲れるのですが、最後まで読むと大どんでん返しが待っていますので、よろしければ最後までおつきあいください。

(以下 現着=現場到着、病着=病院到着 と略します。)

2014年中の 全国の
救急出動件数              5,988,377件(前年比+1.2%) 過去最多
搬送人員                     5,408,635人(前年比+1.1%) 過去最多
救急自動車出動件数    5,984,921件(前年比+1.2%)
搬送人員                     5405,917人(前年比+1.1%)

道内の
救急自動車出動件数    241,214件(前年比+1.3%) 過去最多
搬送人員                    217,618人(前年比+1.1%) 過去最多

全国の消防防災ヘリ救急出動    3,256件(前年比+6.1%)

救急要請~現着時間(全国平均)    8.6分(前年比+0.1分    過去最長
                              (道内)          7.6分(前年比±0分)    過去最長
        ~病院収容(全国平均)    39.4分(前年比+0.1分)    過去最長
                     (道内)        37.3分(前年比+0.6分)    過去最長
だそうです。

広い北海道ではあるけれど、単に交通事情、という点では、

本州のとくに紀伊半島だとか、四国の山奥、

それと三陸地方なんかの道路事情を知っていると、

距離の問題はあるにせよ、北海道だけが

特別に道路事情が悪いのではないのかな、とも感じます。

 

一方で、入院加療を必要としなかった「軽症者」の割合は

全国 49.4%(前年比-0.5ポイント)
道内 46.9%(前年比+0.8ポイント)

だったそうで、割合では全国を下回るものの、全国で減少する中、

北海道は増えていることは気になりました。

とはいえ、「軽症者」の分類には「後出しじゃんけん」の要素も含まれるし、

この手の救急ではある意味、

救命できたはずなのに救急の手からこぼれる患者さんをなくすためには、

受ける方も「はずれ」は甘受しなければならない、

という面もあります。

これまで、私もコンビニ受診・コンビニ救急車利用については

さんざっぱら批判してきたところではありますが、

本当に減らさなければいけないのは何かをよく考えないと、

この種の指標は解釈を誤る可能性があるので注意が必要です。

 

一方で、

市民が心原性心肺機能停止の時点を目撃した症例の、

1ヶ月後生存率     全国 12.2%(前年比+0.3ポイント) 過去最高
            道内 15.2%(前年比-1.4ポイント)

1ヶ月後社会復帰率    全国 7.8%(前年比±0ポイント) 過去最高
                 道内 8.2%(前年比-1.8ポイント)

でした。

道内では、前年比でやや減少が見られたとはいえ、

医療アクセスに関しては非常に厳しい状況が多く見受けられる北海道で、

この数字は立派と思います。

改めて、道内の救急隊員、初期救急、高次救急に携わる全ての

現場職員の皆様に感謝したいところです。

 

いろいろ気になったので、原本を見てみると、

北海道の救急隊の数、救急隊員の数とも、

東京都や大阪府、愛知県をさしおいてダントツのトップなのですね。

不勉強で申し訳ないのですが、調べてみて驚きました。

こういう体制に、我々の生活は守られているわけです。

 

実際、原本で、現場到着所要時間別出動件数の構成比を調べてみると、

20分以上は、北海道では1.8%

他県を見ると、岩手県の5.3%を筆頭に、山梨県の4.5%、島根県・高知県の4.4%と

軒並み平地が少なく、山あいの地域の地形の険しい県が続きます。

先述の道路事情の違いに加え、体制がしっかり整備されていることを

示すものなのだろうと思います。

 

まあ、蛇足になってしまいますが、欲を言えば、

札幌市vs旭川市vsそれ以外の177市町村、

あるいは、札幌二次医療圏vs上川中部二次医療圏vsそれ以外で、

この数字をもう一回計算しなおして見てみたいなあという気はしました。

 

社会復帰率に関しては無理かなとは思いますが、

現着時間と病着時間については、

元データをたどるのは難しいとしても、

公開されているデータを漁って逆計算することは、

粗い計算になってしまうことを甘受すれば、可能と思い

お手軽にできるところからやってみました。

 

下記、データの出典は、

北海道がhttp://www.fdma.go.jp/neuter/topics/kyukyukyujo_genkyo/h27/01_kyukyu.pdf

札幌市はhttps://www.city.sapporo.jp/shobo/kyukyu/shutudou/shutudou.html

です。

 

現着時間(分)

病着時間(分)

救急自動車出動件数

北海道

7.6

37.3

241214

札幌市

6.5

17.9

88162

       

札幌以外

8.2

48.5

153052

→札幌以外は、北海道と札幌市の各時間および出動件数から算出

算出式

   

(7.6*241214-6.5*88162)/153052≒8.2

 

(37.3*241214-17.9*88162)/153052≒48.5

 

 

やっと、誰もが想像する北海道「らしい」数字が出てきました。

 

現着時間については、全国平均の8.6分よりは短い結果でした。

参考までに、

現着時間のトップは富山県・福井県・京都府の7.0分で、最下位は東京都の10.8分です。

 

一方の病着時間については、

ダントツの最下位が東京都の51.8分、で、46位が埼玉県の45.5分ですので、

「札幌以外」で計算すると、ブービー賞に落ちてしまいます。

これが、「北海道」の救急医療の実態です。

 

この数字に関してどうこう述べるのは避けますが、

一つだけ言えることは、「北海道」としての対策を考える時には、

札幌市もしくは札幌周辺を抜きにしたデータを必ず検討しないと、

誤った判断を導くことがあるということです。

(実際にはもっと細かい数字の検討が必要なのは当然ですが、

 ブログ上ではここまでの記載にとどめます)

 

いろいろ事情を知っている人や、こういった統計をもっとご存じの方には

「何を今更」という内容ではありますが、

私自身、もうちょっとマイルドかなと思っていたものが

数字に落としてみるとなかなかだったので、一つエントリーを作成してしまった次第です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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