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「緊急事態宣言」が明けて

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 もう、COVID-19一色で、他の仕事がほぼ完全に吹っ飛んでしまっている状況です。
 実は職員に「お前は働きすぎだ」とダメ出しをされ、
 この3連休は何か大きなことが起こらない限りなかば強制的に休まされている状況です(汗)。
 むしろ現場で汗を書いている医療従事者の皆様には申し訳ないというか…。

 まあそれでこのような駄文を連ねる時間が多少できたというわけです。
 (もちろん、管内の発生状況等の報告は適宜電話で受けていますし、何か起こればすぐ出勤できる状況はとってます)

 基本的な気持ちは先週の知事会見や専門家会議と一緒で、
 ・爆発的な患者増加に伴う医療需給バランスの崩壊による異常事態はとりあえず現時点で少なくとも先延ばしにはできている
 ・緊急事態宣言や学校休校も一定の効果はあり、安堵している。
  (この状況では、収束していなくても新規感染者数が現状維持~若干減であれば、成功と考えるべきです)
 というのが正直なところです。
 今後も
 ・オーバーシュートを起こさせない→クラスタの芽を丁寧に潰し、できてしまったクラスタは徹底的に封じ込める
 ・感染連鎖が起こると致命的になるような場所・集団に波及させない
 が目標であることは変わらず、まだ体制を緩めることはできないと感じています。

 それに加えて、もし「オーバーシュート」が起きてしまった場合の備えも同時進行で行っていかなければなりません。
 当初の予想以上の長期戦、持久戦になりそうです。

 一方で、このような強い措置をやりますと、
 効果よりも副作用の方が先に出てくるのが常です。
 しかも効果というのは、良くても「何も起こらなかった」という極めてわかりにくいというか認識しづらい効果なので、
 はたから見ると結果的に副作用しか見えてこないということもまた、こういった対応ではよくある話です。

 いろいろあって、私自身のCOVID-19に関わる仕事自体の内情はほとんどお話できませんし、
 一昨日、専門家会議の新たな見解も出た中、
 医学的なことや感染防御策について私が語るのも屋上屋を架すようなものなので、ここではやりません。
 (某所では実名で、仕事で市町村や上司へのプレゼン、職員教育用に使っているスライドを
  限られた範囲で共有していますが、いろいろあってここではやりません。)

 そういうのはぜひ、テレビに出ているような「感染症に詳しい○○」ではなく
 感染制御や危機管理に責任をもって現在も実践に当たっている人の責任ある発言
 (お前もそうだろ、と突っ込まれそうですね。ただここは「一応」匿名ブログなので、読む人の判断になります)や
 学会声明を参考にしていただくとよいです。

 できれば、マスコミのフィルターを通さないことをおすすめしますが、
 完全にマスコミをシャットアウトしてしまっても必要な情報を得られないので、
 自治体の医師や実際に治療に当たっている医師の署名記事(読めれば論文そのもの)、
 あるいはNHKニュース速報アプリの会見生配信などがよいです。

 都道府県や保健所設置自治体首長さんの談話も、
 少なくとも科学的事項や事実関係は必ず所属行政医師のチェックを受けているので
 そこについては信頼できます。

 私自身も仕事上では情報をわりと積極的に発信しているのですが、
 そこで気をつけていることは
 ・突飛なことを言わない。賛否両論が割れて論争になっているところにはあえて踏み込まない
 ・最先端を狙わない。新知見は他の多くの専門家の評価を待つ。
 ・臨床感染症や感染制御の専門家からみて、「当たり前すぎてつまらない」と思えるようなことしか言わない
 ・最悪ケース想定の共有と、無闇矢鱈に不安を与えないことの両立を目指す
 ・表立った政府や行政体の批判や、「こうすべきだ」論は(できるだけ)言わない
 ・不用意に不安を与えない。不安の裏返しである、人々の怒りや悲しみといった感情を無用に掻き立てることは言わない

 といったところでしょうか。

 でも、これが本当にちゃんとできているのは、やはり学会声明であり、専門家会議声明だったりします。

 これからは、
 ・事態を冷静に受け止め
 ・最悪ケースを想定しつつ
 ・次に行うアクションは何かを学び、考え、実行する
 これを、政府、都道府県、市町村、各医療機関、住民、それぞれの立場で実行していかなければなりません。

 このどれが欠けても、感染症対策はうまくはいきません。

 また、感染症の恐怖に民衆が冷静さを失いパニックになれば
 感染症で失われる以上の多くの命が失われる可能性もあります。
 我々は「公衆衛生」に責任ある立場なので、たんに感染症を制圧するだけではダメなのです。
 政治と連携して、人命についても経済的にも「最小被害」を狙っていかなければならず、
 そこは医療・保健だけでない「さじ加減」が必要になります。

 誰からも文句の出ない方策なんて、最早とれる状況ではありません
 そこは我々行政が責任もって引き受けなければならないところです。

 医学・医療・保健の素人でありながら責任ある立場にある自治体幹部や首長に寄り添い、
 その政治決断を専門的知識をもって支え、
 行政体全体として住民の社会生活の維持に全力を尽くす、

 それができるのがわれわれ「公衆衛生医師」の専門性そのものであろうと確信しています。

 COVID-19で命を落とす人を一人でも少なく、
 そして、COVID-19のせいで、COVID-19以外の原因で命を落とす人も一人でも少なくするために、
 我々は、少なくとも私は、与えられた立場で全力を尽くしていますし、今後もそうありたいと思っています。

 引き続き、力を合わせ、この難局を乗り切りましょう。

 

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コメント

>通りすがりの関係者 さま

 ご無沙汰しております。
 現状の仕事のほとんどが「保健所ではない業務」になってしまっており、
 あらためて公衆衛生が政治と不可分であることを感じております。

 わが北海道においては、知事を中心に強い危機意識のもと
 「ロックダウンに相当する外出自粛」の呼びかけがされていますが、
 エピカーブを作って解析してみると、石狩・オホーツク以外の地域は
 4月12日の「北海道・札幌市緊急共同宣言」以来、確実に減っています。
 減ってない石狩とオホーツクは、前者がクラスターと市中感染、後者がほとんどの事例がリンクが追える事例で
 全体としては新たな「宣言」の効果は出ていると私は判断します。

 しかしながらそういった状況にあって特に一向に患者数が減ってこない石狩については、
 まだ厳しいといえますし、この施策を行ったことで「次に何をすべきか」が明確になったとも言えます。

 公衆衛生上の施策評価は非常に難しいとは思います。
 「何が正しいのか」「そもそもどうあるべきか」というところから始めないといけません。
 それを「最初から考えること」と「進みながら改めて考えること」を忘れてはいけないといろいろ痛感しております。

残念ながら北海道の「一人勝ち」は長続きせず「再流行地」になってしまったようで、陣中心よりお見舞い申し上げます。
さて、「緊急事態(宣言)」の「あり方」については改憲議論も含め今後の検討課題と思いますが、現行特措法における強制力を持たない自粛依頼ベースでもできる(た)ことがたくさんある(あった)ことに驚いています。
その現行特措法の建付けは、中央主導で空転した2009pdmの反省を踏まえ、地方自治体が「地方の実情」に合わせた柔軟な対応ができかつそれを期待するものになっていたのですが、その「地方の実情」が「流行状況」や「医療体制」のような「客観的状況」にとどまらず自治体首長による「政治案件」化が可能であって、実際そうなってしまったことに「驚き」を超えて驚愕しています。
そして、今や日本の自治体レベルどころか某超大国(複数)やあのWHOまでもが、公衆衛生の前提であり本質である「共同社会の組織的努力」の拠り所を「科学・技術」から「政治案件」にシフトさせているように感じます。
公衆衛生が「共同社会の組織的努力」を前提としている以上、そもそも政治とは不可分であり、それが私の持論でしたが、その私でさえ「世界も国も地方も政治がこれだけ前面に出て今後の公衆衛生は大丈夫なのか?」と思うようになりました。
特定首長の特定政策への感想は控えますが、コロナを克服した後に見える公衆衛生の景色は今までとはかなり異なるものと思います。

ありがとうございます。
この感染症は非常にphaseの移り変わりが速く、
ついこの間まで北海道が流行の最先端を走っていたと思っていたら、
こんどは一転して3大都市圏が荒れる中、北海道の「一人勝ち」状態になってしまいました。
むろん、これは表面上の状況であって、北海道が外から「輸入」してくるのを防ぐ努力と、
ところどころに残っている火種を炎上させないような努力の両方が必要な状況となってきました。

野球で言えば一回裏に入ったところと言えますでしょうか。

そして、今後の展開を考えると、対策は持続可能なもの、あるいは断続的に実行可能なものでなくてはなりません。
3「密」と言いますが、その密閉・密集・密接が避けられない、あるいはそれを本質的に売り物にしている
商売をしている方々にとっては地獄そのものでしょう。

感染症は制圧した。しかし不況で自殺者が続出し、感染症以上の社会不安がまん延した…では
やはり公的機関の行う感染症対策としては失敗です。

ただ、本文にも書きましたが、最早誰からも文句の出ない方策は不可能ですし、
ゼロリスク論も現実的ではありません。

このCOVID-19という感染症は、その感染性も毒性も「微妙」なものであり、
むしろそれによって社会不安や経済損失を起こす、これまで余り見られなかったタイプの
「微妙にたちの悪い」疾患と評価します。

人は感染症のみで生きているわけではないので、
感染症を制圧した「その先」の話や、感染症対策の目指すもの、着地点を常に見ながら
前に進んでいかなければいけません。
その意味で医療・保健の面から政治とのパートナーシップをしっかり取れるのが
感染症健康危機管理における公衆衛生のあり方と私は思っています。

この危機管理は先読みが非常に重要であり、その意味でSARSの教訓は
大変有用なものと思いました。資料の提供ありがとうございました。

Sammy先生、いろいろお疲れ様です。3/24には東京2020が延期になり、3/25には(オリパラ延期決定を待っていた?)小池東京都知事が「重大局面」を宣言しましたね。
私が週2~3の日勤バイトで毎回違う現場に出勤する際に利用する鉄道やバスも平日・休日関係なく閑散としています。

ところで、北海道の緊急事態宣言「明け」は、もちろん「事態好転」という背景があるにせよ、それ以上に副作用緩和のための「休薬」の意味が大きいと拝察します。
北海道の「緊急事態宣言」発令当初には「まだ早い」とか「法的根拠がない」とかいろいろな批判がありましたが、今後は逆に「明け」の妥当性が厳しく問われてくるものと思います。
いずれにせよ、狭義の公衆衛生は科学であり技術であるとしても、現実社会の疾病対策は「共同社会の組織的努力」を総動員する高度な統治・政治行為そのものであるという「歴史」が今回も繰り返されていることに留意すべきと思います。

今後の展開などまだ誰にも分からないのですが、疾病対策には距離差と時間差が重要であることは歴史が教えることで、今回は中国の対策を世界が、北海道の対策を日本が、日本の(主にDP号の)対策を欧米がそれぞれ他人事として批判しているうちに貴重な時間を浪費して被害を拡大させていることは残念です。

ところで宣言「明け」後の北海道がとるべき(後始末?再爆発対応?)対策について考えるうえで、先行する(?)中国の動きはもちろんですが、SARSの教訓を確認しておくことは有用と思います。

溢れる情報量の中にすっかり埋もれているのですが、SARSのエピカーブ(全世界、中国、香港、台湾、シンガポール、ベトナム、カナダ、米国、WHO欧州)を貼っておきます。
https://www.who.int/csr/sars/epicurve/en/epicurves2003_06_17.pdf
パンデミックにおける地域差や時間差をきちんと理解していれば、中国が今はリエントリー対策にシフトしていることが理解できますし、北海道や沖縄のような「島国」が今後どうすべきかの示唆も得られるものと思います。

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