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2019年9月

再編統合の「必要性について特に議論が」必要な公立・公的医療機関等について

10/9内容を一部修正しました。

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最近いろいろ忙しくてついつい更新をサボりがちでしたが、
さすがにこのネタはスルーできないので、いつものように駄文を書き連ねてみます。

厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」での議論を経て、
「再編統合の必要性について特に議論が必要な公立・公的医療機関等」が実名公表されました。

424病院は「再編検討を」 厚労省、全国のリスト公表(日経の記事にリンク)

全国で424病院が名指しされ、うち北海道内は54施設と全都道府県中最多となっています。

北海道が全都道府県最多となった背景には、
非都市部の急性期医療の多くが市町村立や厚生連・日赤などの公的病院によって供給されていることや、
町立病院クラスの病院など、診療対象人口が数千人クラスの病院が多いことがあると思います。

新聞報道などを見ると、「再編統合が必要とされた医療機関」などと、
まるで医療機関が不要であると断じられたようなセンセーショナルな書き方になっていますが、
個人的な感想としては「あ~やっぱりこうやって誤解されたか」というところです。

言っておきますが、「再編統合が必要な医療機関」と書かれている新聞・報道はすべて不正確です。

大事なことなので再度いいますが、厚労省の元資料は
「再編統合の必要性について特に議論が必要な」という表現で一貫しています。

先に結論を言ってしまうと、今回リストアップされた病院は、
厚労省が示すデータではその必要性を示すことができなかった公的・公立病院」というのが
正しい解釈と私は考えています。
で、その必要性については地域できちんと話し合って、
存続という方向をとるならば、その必要性、必要な理由
そしてどのような形態で(そのまま?ダウンサイジング?診療所化?一部機能の他院委譲?病院機能の転換?)存続するかの具体的な絵を描いて
各地域において行われる「地域医療構想調整会議」の議論を通して示してくださいねということと思います。

以下、解説です。

今回リストアップされたのは、
1,近接地(救急搬送を考慮し、おおよそ車で20分程度)に機能の類似する医療機関の存在する公立・公的病院(以下「類似かつ近接」という)および
2,「特に診療実績の少ない公立・公的医療機関」です。

前者は、主に都市部の病院で同じ市街地に「どんぐりの背比べ」のような病院が林立している場合や、
北海道では例えば空知南部のように市町村が密集しているような地区で近接距離内に類似した診療実績の医療機関がある場合を
イメージするとわかりやすいと思います。

一方で、北海道で大きな問題となるのは後者と思いますが、こちらはもう文字通りの意味です。

その選定ですが、まず、全国の地域医療構想区域(北海道では二次医療圏と一致)を区域内人口で層別化します。
(「100万人以上」「50万人以上100万人未満」「20万人以上50万人未満」「10万人以上20万人未満」「10万人未満」の5階層)

「類似かつ近接」は、上記層別ごとに「周産期医療」「小児医療」「救急医療」「脳卒中」「心筋梗塞等の心血管疾患」「がん」6領域全てにおいて診療実績の類似する医療機関が車で20分以内の近接距離にある場合に該当します。この項目は、医療機関の競合による共倒れを防ぐことを目的としていると思われます。

一方「特に診療実績の少ない公立・公的医療機関」については。上記層別ごとに「研修・派遣機能」「へき地医療」「災害医療」「周産期医療」「小児医療」「救急医療」「脳卒中」「心筋梗塞等の心血管疾患」「がん」の9領域のうち「小児医療」「救急医療」「脳卒中」「心筋梗塞等の心血管疾患」「がん」についてそれぞれの領域の各評価項目の実績がすべて下位3分の1に入り、かつ、「周産期医療センター」に指定されておらず「周産期医療」の実績が下位3分の1に入り、かつ「研修指定病院(基幹型)」「へき地支援病院」「災害拠点病院」のいずれにも指定されていない、(10/9修正)をすべて満たす病院を機械的にリストアップしたもので注意したいのは、こちらは「類似かつ近接」の条件とは異なり周囲の医療機関との距離は関係ないというところです。

なお、各領域ごとの細かな内容についてはこちらでも不明ですが、
厚労省からワーキンググループの内容に関してある程度の資料は公表されていますので、時間のある方は御覧ください。

いずれにしても、当然のことながら北海道特有の「広域分散」「積雪寒冷」「公共交通機関の貧弱さ」「病院ごとの対象診療人口の差」「自治体立病院に大きく依存する地域医療体制」などは考慮されていないわけであって、北海道においては過疎地の小さな町村立病院がリストアップされるのは、ある意味当然ということになります

ここからは推測ですが、厚労省ワーキンググループは、そこを「あえて考慮しない」ことで地域における議論を促そうとしたのではないでしょうか。この集計そのものが粗々のものであることは、作った厚労省が最もよくわかっているはずで、実名公表された病院や地域においては「再編の要請」ではなく「再検証の要請」をするということで、病院を「潰せ」とか「廃止しろ」と言っているわけではなく、「必要性を地域でよく検証してください」ということなのでしょう。

だから、厚労省はリストアップされた病院の中にも今回の9領域に含まれない重要な役割を地域で果たしていることもあるのでよく議論することとワーキンググループの資料の中でも明言していますし、今回公表された医療機関は、くどいようですが報道の論調のような「再編統合の必要がある医療機関」ではなく、「再編統合の必要性について特に議論が必要な公立・公的医療機関等」ということです。

ここを誤解されてしまうと、地域の医療供給体制の在り方に関する議論を進めることができなくなってしまいます。その具体的議論こそ、「地域医療構想調整会議」で各医療機関の代表や首長さん、受益者たる住民代表なども含めた地域の代表がしっかり議論すべきところなのです。

あと、「再編・統合」という言葉が一人歩きしていますが(これも公表前に危惧した通り…)、ダウンサイジングや機能転換なども含めた、地域全体の医療の在り方の検討の中で個別医療機関をどうするかを検討してくださいということで、例えば「病気になったら40~50kmも離れた隣町に行けということか」などという批判は当たりませんそういう事情こそ、「地域医療構想調整会議」で議論されるべきものです。

また、リストアップされた医療機関を国が問答無用で「不要な病院」と断じているわけではないので、ここは是非、誤解なきようお願いいたします

あと、道新の1面の中見出しには「医療費抑制狙う」と書かれていますが(本文にそのことを書いてないという内容以前の問題はこの際置いておくとして)、単純にそれだけではなく、集約化などを含む医療提供体制の効率化によって不採算医療を担う医療機関の共倒れを防ぐという目的もあります。これについてはそもそもの地域医療構想の考え方で、一貫しているものです。

さて、ここまでは国のスポークスマンみたいな論調になってしまいましたが、今回医療機関の実名が公表されたことによる懸念が思いつくだけで3つあります。

一つ目は、リストアップされた病院に医師を派遣している大学医局がこれを契機に医師を引き上げてしまう可能性
二つ目は、公的病院を運営する厚生連や日赤などがこれを機に当該地域から撤退する引き金となってしまう可能性
三つ目は、リストアップされた病院の将来に失望して看護職員等の大量辞職を招く可能性です。

いずれも「予期・計画しない」医療体制の縮小、すなわち医療崩壊を招いてしまう可能性があります。
これについては、正直名前が公表されてしまった以上、各医局や機関に自制を求めるしかありません。
うがった見方をすれば厚労省はそれをこそ狙っていたということも言えなくはないのでしょうが、
ここのリスク評価についてはやや甘かったのかなという印象がぬぐえません。

いずれにしても、今回俎上に上がった各医療機関を抱える地域においては、
センセーショナルな報道に決してうろたえることなく、
着実に議論を行っていかなければならないと思いますし、
医療提供の効率と住民の安全を秤にかけた議論は今後とも継続していかなければならないと思います。

今回の明らかに批判に偏った各社の報道で、この議論に水を差されることが
ないように願うばかりです。

 

おしらせ

ご無沙汰しております。
ネタがないわけではないのですが、最近ちょっと多忙気味で
投稿がなかなかできない状況です。

さて、最近コメントスパムが多くなってきて、
一応自動公開されない設定にはしているのですが、いちいち削除するのも面倒なので、
(先般のココログ仕様改悪により、携帯からのコメント削除ができなくなってしまいました…)
大変申し訳無いのですが、
コメント入力時の画像認証を一律で導入したのと、
海外IPからの投稿を禁止といたしました。

ご不便、お手間をおかけいたしますが、
何卒ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

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