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Dr.SAMMYの医師偏在対策”妄”想(医師偏在の処方箋…への処方箋 続編)

この先、内容が内容ですので、お約束の前置き

前エントリーにも記載しましたが、このブログの記載は、所属組織とは一切関係ありませんので、
内容について所属組織に問い合わせることは一切ご遠慮ください。
また、プライベートなブログの内容について私の勤務先などに照会をいただき、私がそれに答えることは
「職務専念義務違反」「職場の電話の私的利用」となりますので、
当然のことながらそのような対応は一切いたしません。
ブログ内容についての問い合わせや疑問・照会その他は
必ず、本ブログにリンクされているメールアドレスもしくは、コメント欄にお願いいたします。
(希望があればコメント欄投稿に非公開希望といった対応も可能です)

さて、このエントリーは、前エントリーの内容を受けてのものなので、
まずはそちらを読んでいただかないと、
たぶん内容がさっぱりわからないと思います。

「暴論」ついでに自分の頭の中にある具体論を示す。
 前エントリーで示した
「一定の数の医師のへき地への最低1年以上のスパンでの「常勤医の派遣」を
「基幹型臨床研修病院」の指定要件に組み込んでしまうという手もあろう。」

の、具体案である。

「地域医療体制確保イコール医師招聘、医師数確保ということではない」と
言い続けてきて随分経つが、
医師偏在という現実が存在することもまた事実である。

頭の中にあったもやもやしたものを単純に文章化して吐き出しただけなので、
実現可能性や支離滅裂さについては目をつぶっていただきたい。
個人的には「何に目をつけているか」のみを見ていただければそれで十分と思っている。

また、この考え自体は特定の自治体や地域を指したものではないことをご了承いただきたい。

・医師派遣の希望は各施設ごとに募り、年1回、都道府県で一括してまとめる。その時期は、外来の周期が長い患者で3ヶ月程度であることを勘案して、それに調整を間に合わせるために10~11月ごろとする。

・その内容には、実際の診療対象人口・区域、希望する科の医師人数、科でもっている病床数と病床回転率、医師1名1日あたりの外来患者数、入院患者数、処置・手術の実施数、医師不足によって起こっている患者流出の具体的状況(推定流出患者数、流出先医療機関)、(病床ありの場合は)平均在院日数、および90日以上入院している患者がいる場合はその理由。自宅退院率と、周囲の介護保険施設の状況(待ち時間なども含め具体的に)。

・医師数増によって、外来・入院患者数、処置・手術の数の増加する見通しおよび、現在できていない処置を新たに開始したい場合はその具体的な内容と予想される件数(例:心カテ○件/年、内視鏡○件/年、開腹手術○件/年など)

・当該病院の医師1名1ヶ月あたり当直数およびオンコール回数(給与の出ていない自主オンコールも含めて具体的に!→要するに月30回オンコールというのも当然あり)

・その施設が万一縮小または廃院、科閉鎖となった場合に起こりうる影響を具体的に(例:今まで当院で○○の手術ができなくなる、急性冠症候群の患者搬送距離が200kmを超えてしまう、脳梗塞に対するt-PA治療が不可能な地域ができてしまう、離島で医師不在中の看取りができず在宅で最期を迎えられなくなる…とか)。実際に不利益を被るであろう、推定患者数も含めて。

・医師を実際に派遣した際に、どういう使い方が想定されるのか(月間当直/オンコール回数、外来のコマ数、手術・処置・検査の数、完全フリーになれる日数をどれだけ、どう保証するのか)

・医師以外のスタッフの充足率。とくに看護師不足による休床の有無と数は重要。

・医師増員による病院経営改善の見通しと、医師増員のならなかった場合の経営試算。

と、最低限ここまでは見通しを示してもらいたい。

これは、そんなのわからない、予測できないでは済まない。
限られたパイをどう切りわけるか、最終的に市町村ごとのガチの利害調整になる以上、
このくらいの情報が出せないような甘えた自治体には人員を要求する資格がない、
ということは明確にしておいた方がよいだろう。
また、目的はあくまで住民・患者の利益にあるので、
当然のことながら病床を維持することで生じる補助金などが目当ての場合は
明確に排斥されるべきである。
(ちなみにこれらのほとんどは、
 以前自分が派遣された施設に、実際に自分で確認していたことである)

さて、続き

・上記各報告については、必要に応じて都道府県が各派遣希望施設に詳細な事情を確認することができ、各派遣希望施設はこの確認に対しては誠実・率直に答えるものとする。

・基幹型研修病院には必ず1名以上、派遣調整を行う「調整員」を配置する。少なくとも各科部長クラス以上で、一定期間以上のへき地診療経験のある人が望ましい。

・都道府県ごとに一括してまとめた情報をもとに、各基幹型臨床研修病院ごとに可能な派遣施設、派遣可能な要員をまとめてもらう。派遣希望施設から得られた情報は全て「調整員」に開示される。

・派遣される要員は、家庭医・総合診療医などのほか、地域センター病院に必要な各科専門医も含まれる。とくに一人医長や一人診療所などのため医師に「万年オンコール状態」「万年宅直状態」などの過大な負担がかかっているところは診療対象人口・診療内容を考慮した上で優先されるが、適切な集約化とそれに伴う住民の不利益のカバーを行う計画がきちんとできていることと、夜間休日のコンビニ受診防止のための住民教育が市町村の保健部門によってきちんとなされていることが条件となる。

・派遣医師の年次は、自治医大の義務年限が最短9年であり、地域枠の義務年限も9年を想定している都道府県が多いこと、地域である程度責任ある立場に立つことを想定しているため、医師10年目以上を原則とする。

・自前の医師数減を前提とした派遣増員要請は、特別な事情がない限り原則認めない。
 (特別な事情とは、自前雇用の医師の能力不足や勤務態度不良・素行不良などのために明らかに住民・患者や病院経営に害を与えている場合などを想定)

・都道府県は、それをまとめて、重複および不足を調整する。不足分が充足できない場合は、都道府県が先に得た情報から優先度を勘案して派遣人員の調整を行う(その際、必ずしも数だけではなく、診療内容や質・必要な技能も当然考慮する)。その際、各基幹型研修病院の「調整員」の意見は聞くが、一方で都道府県の行う調整については、後に述べる拒否権を行使する場合のほかは必ず従うこととする。
(なぜ、「地元の意見」としなかったのかというと、ガチの利害調整なので、「うちが、うちが」となるに決まっているので)

・この調整によって、とくに大都会の基幹型研修病院ほど、遠隔地への派遣が多くなる傾向になってくるものと思われる。(これは甘受してもらうしかない)

・また、首都圏近郊の県など、県内の医師数そのものが不足しているところについては、県を越えた調整を行う。

・このマッチングが終了した時点で、各基幹型研修病院と派遣先施設との直接交渉は可能とする。ここで、派遣医師の待遇や、具体的な診療の内容・期待する診療の量など具体的な交渉を個別に行う。派遣予定医師本人の交渉への参加は、これを強く推奨する。

各基幹型研修病院には派遣についての拒否権を与える。これは、「医師いじめ」や嫌がらせ、常識に照らして明らかに不当な待遇面の問題、適正な診療の妨害(例えば議員や首長などを介した不適当な社会的入院の強要など)などの派遣医に対する不当な扱いを防ぐ目的のほか、医師以外に経営悪化や診療体制縮小の原因があってそれが改善されない病院に継続して医師を派遣しても有効な地域医療支援にはならないからである。例を挙げるならば医療従事者の適性を欠く職員のコネ採用や、必要な医療機器・人員についての予算が決定的に不足しているような状態や、不正経理・補助金の他目的への流用といった不適切な病院運営など。まちの政情不安定による医療機関の体制不安定も理由となる。

・その他、その派遣先施設の要求する水準の医療を提供できる人員が派遣元基幹型研修病院にいない場合も拒否権行使可能要件とする。

・拒否権を行使する場合は必ず、「調整員」と院長の連名で拒否権を行使する正当な理由があることについて文書で示すこととする。都道府県はそれをもって実態調査を行い、理由が正当であり、かつその事実が存在する高度の蓋然性が認められた場合には、その事由がなくなったことが確認できるまでの間、「派遣リスト」より外し、別途「ブラックリスト(仮称)」に登録することとする。

・一方、拒否権を行使する場合、拒否した分の人員を必ず別施設に派遣すること。(その場合、同じ科・同じ医師でなくともよい)

・各派遣先施設については、派遣される医師を拒否することは原則不可とするが、派遣される医師について決定前に派遣先と派遣元で協議を行うことは強く推奨する。派遣予定医師本人を交えるとなおよい。実際の診療などの際に住民・患者の不利益となるような能力の不足や勤務態度・素行不良、職場内の人間関係などの問題があった場合には、派遣元基幹型研修病院に対して人員交代を要求することができる。この交渉が決裂した場合は都道府県が仲裁に入り、実態を把握した上で調整を行う。

・一方で、拒否権を不当に行使していることが明らかとなった派遣元病院については、補助金カット・基幹型研修指定病院指定取り消しなども含めた、相応のペナルティを与える。

・全ての交渉がまとまった時点で(まとまらなくても一定の期限を切って)各派遣元施設の「調整員」会議を開き、その場でその年度の派遣計画について、正式に承認を行う。資料は事前配布し、問題点があれば事前に、あるいは会議の場で討議する。

・医師の派遣については年1回更新を行う。その協議の時期は、市町村の派遣依頼とりまとめと同時とする。その際、人員交代することも同じ人を派遣することも可能だが、原則同じ基幹型研修病院から次も派遣するものとし、患者引き継ぎは前後の人員が責任を持って行うこととする。

・この「更新」の際、何らかの理由で同じ基幹型研修病院から人員を派遣できなくなってしまった場合は、改めて都道府県による調整を行うが、その場合は各「調整員」が責任をもって前後の医師間の引き継ぎの場のセッティングを行うこと。

・「更新」の際も同様に、基幹型研修病院の「拒否権」と、派遣医師についての「事前交渉」は認めるものとする。とくに後者は推奨する。また、都道府県でもこのままの派遣継続が適当かどうか、各々の施設について必ず再検討を行うこととする。

・一方で、長期間の遠隔地・離島勤務や勤務条件の厳しい地域への長期連続派遣による派遣要員の心身の疲弊を防ぐ責任は基本的に基幹型研修病院にある。「調整員」が中心となってそのような事態が起こらないように調整を行うこと。

・各派遣先施設は、それぞれの経営状態・地域の医療の状況について、年1度派遣によって得られた改善の度合いを最初に挙げた各指標をもって都道府県に報告するものとする。それをもとにして都道府県は今後の派遣継続の要否を判断して、派遣リストを定期的に見直し、更新する。

・派遣要員の雇用、育成にかかる費用は、都道府県がきちんと予算として捻出する。

専門医資格の維持のための症例蓄積、研修機会の確保については、派遣元医療機関が責任をもって行うこと。(研修日の代診派遣や、指導医の派遣など)

・都道府県はその時々の事情に照らし、定期的に派遣リストの見直しを行うこと。

と、ざっと頭の中にあるものを掃き出してみた。

基本的に医師派遣というのは、派遣先と派遣元、派遣先と派遣要員の信頼関係がとても重要。
それはとてもパーソナルなものであり、とても内輪的なものではあるけれど、
それが地域では大切なものになっているということは否めないし、それが地域医療というものである。
その信頼関係を一方的に崩した施設や自治体には、
派遣元であろうが派遣先であろうが相応のペナルティを与える必要があろう。

また、一度書き出してみてざっと眺める限り、基幹型臨床研修病院に非常に多くの負担がかかる
システムを自分は頭の中で考えていたことがとてもよくわかる。
ただ、大学から初期研修医を「奪い去った」のだから、それまで大学医局が果たしていた役割の
いくばくかは果たしてもらわないと困る、ということもあろうし、
前エントリーにも書いた通り、少しくらい余剰人員を抱えるくらいでないと、実際の研修医の教育を
十分に行うことは難しいと思われ、それに対する手当はきちんと行う必要はあるのだろう。

それと同時に、各自治体に対しても「定期的に医師が供給されることで生じてくる甘え」を
起こさせない対策も必要だということはこれまでの地域での臨床経験で痛感している。

私自身も、文書にまとめてみて、改めてへき地・離島勤務中に
何に悩み、何に憤っていたのかを、きちんと整理できたように思われた。

こんな「荒唐無稽」な案がもちろん、どこかで採用されるなんて夢にも思わないが、
(あえて「思いつき」とは言わない。10年以上かけて温めてきた思いなので)
各自治体が
「よそ者の力を借りてまで自前の医療機関を維持して
 住民の健康管理・疾病対応に当たる」
ということがいったいどういうことなのか、
何を意味し、どういう覚悟を要求されるのか、
といったことを考える契機になればそれに優る幸せはない。

「医師不足」「医師偏在」とはその現象自体が本質なのではない。
あくまで表層的な「現象」にすぎず、
いったいどんな背景が実体化されたものなのか、
当事者がしっかり考えなければ、
現状のさらなる改善はないだろう。

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コメント

>foobirds先生

ありがとうございます。

基幹型研修病院はほとんど実質大学医局の支配下なのだから、結局は大学支配に戻るのではないか、というご指摘は
必ずいただくと思っていました。

結論から言うと、私は「それでもよい」と思っています。
大学支配だろうがなんだろうが、大学も含めた基幹型研修指定病院には必ず、地域医師派遣センターのようなものを作ってもらい、
そのセンター長、つまり「調整役」を中心に調整を行って派遣をする体制さえ作れれば、
それが実質大学支配であっても、まあしょうがないでしょうか。
要するに「中で医局同士の争いをするのは勝手だけど、最後は一つの組織として責任を持ってやってもらいますよ。仮にも基幹型研修指定病院を名乗るならそれくらいのガバナンスは見せてください。」ということです。

>問題になるような地域の病院、体制があったとき、『そんなのでは医師が来なくなるぞ!』っていう脅しとペナルティーで地域の役人や事務職員が改善するかどうかですよね

ご指摘の通り、一朝一夕での改善は難しいと思います。
ただ、医師偏在対策は待ってはくれませんので、短期的な視点が中心となります。
しかし、長期的に関係者を育てる視点も必要です。
たぶん、本当にこれをやったとしたら、最初の数年くらいは交渉決裂事案が山ほど出てくるでしょう。
我々都道府県職員が仲裁に入ったところで力不足。(もちろんそれではいけませんが)

とすれば、これを「公に出す」しかないのでしょう。
少なくともペナルティーを与えるからには、訴訟対策も含めて、
理由・背景をある程度公にする必要も出てくるかと思います。

現状を満足すべきものとは到底思いませんが、ネット社会の発展で、
かなりの数のブラック病院、ブラック医局が内情を「公に暴露」され、立ち去り型サボタージュの洗礼を受け、
表面上だけでも改めたところも多いように思えます。改めないところは、消え去るところも出てきました。
困ったのは住民です。でも、そもそも住民も無意識にやってきたので、なんで困ったのかの理解すらできない…。

もちろん、どうしようもなく、無意識にそういう状態になっていることの理解は必要です。
じっくり丁寧に時間をかけて理解を得ていく必要は有ると思います。
ここで大事なことは、ただ何もせずに「じっくり丁寧に時間をかける」ということは何もしないことと同義ですから、
「短期的な施策を粛々と進めながら、」じっくり丁寧に時間をかけることが大切と思っています。

医師派遣に際し、数のみを揃えるのにやっきになって、
お互いの理解を深めるための事前の根回しを怠ってきた自治体が多いからであろうと考えています。
問題が起こると事後調整という形でようやく交渉になるところが多い印象です。
「事後調整」ではなく「事前の根回し」こそが重要であるはずです。
その反省から「派遣決定前の事前交渉を推奨、その場に派遣予定医師本人がいればなおよし。」という一文を加えたものです。

http://hpcase.jp/column/senmoniseido-tokusuruhito-sonsuruhito/

まあ、実際には、新専門医制度によって、かなりの科で大学病院しか基幹型研修病院になれなくなりましたので、事実上大学医局の復権になるんでしょう。どこの病院かまでは存じませんが、関連病院に、『大学の許しなく基幹型研修病院に手を挙げたら絶縁』のお達しが出ているところもあると聞きますので、大学が先生の言われているような調整役をつとめるようになるのではと思います。

それがまた、良いことと、悪いことがあると思うんですよ。大学はプレゼンスがあがることをみているでしょうが、恐らく新専門医制度では厚生労働省の関与が強くなるので、厚生労働省は厚生労働省で自分達の口を出せる範囲が広くなりますし。問題はその力をどう使うかなんですが、そこまでのビジョンがあるかな、、、

あとは、問題になるような地域の病院、体制があったとき、『そんなのでは医師が来なくなるぞ!』っていう脅しとペナルティーで地域の役人や事務職員が改善するかどうかですよね、、そこの病院がないと地域が成り立たないのであれば、職員や役人さんたち、議員さんたちも本気で色々考えて欲しいところですが、今の地方自治の迷走っぷりをみると、どうもそもそもその地域にいて、現場にいる人たちにはそういうビジョンも、能力も不足してしまっているケースもあるのではないかとも思います。問題が見えてこないのであれば、問題意識を持つこともないですので、『医者が悪いから病院がよくならない』『地方自治体が悪いから病院がよくならない』とお互いに言い合っているだけで時間が過ぎてしまう気もします。

お互い、問題点の指摘を言いっぱなしでなく、相手がある部分どうしようもなく、あるいは無意識にそういう状態になってることに対しての理解がないと、アドバイスってなかなか相手に入りませんよね、、、

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