セカンドオピニオンを求めると怒りだす医者
このエントリーを書き始めるにあたって、これだけは言っておきます。
セカンドオピニオンの求めを受けて怒りだすような医者に、
医師を名乗り患者を診察する資格はありません。
もしそういう医師に遭遇したら、即刻転医すべきです。
ここまでで私の言いたいことの半分は言ってしまっているのですが、
今回は残り半分についてです。
一般にセカンドオピニオンとは、現在自分の受けている診断や治療に際して、
別の専門家の意見も聞いて今後の治療方針の決定に役立てていく、といった意味を持ちます。
なので、何を根拠に現在の診断に至り、これまでどういう治療を行ってきて、
これからは何を目標にどういう治療を行っていく方針であるのか、それを
きちんと文書で記した手紙を持って行くのが必須条件であります。
更に、それまでの診断根拠となった所見を含むレントゲンやCT/MRIの画像ですとか、
血液検査の過去データなどは必ず必要になります。
患者側からの求めで行うこともあれば、医師側から現在の治療行為で本当によいのか
より知識・経験のある専門医の判断も聞きたい、という理由で勧めることもあります。
一方で、どこどこでこういう診断をされたのだが本当にそれでよいのかこっちで
診てもらいたい、などと手紙もデータも持参せずに来院される患者さんもいらっしゃいます。
もちろん、現在内服している薬もわかりません。あまつさえ、前医から出ていた内服を、
自己判断で相談もせずやめてしまったという方もいらっしゃいます。
ことに「総合診療科」という看板を掲げていると、
「診断のプロフェッショナル」という先入観からかそういう患者さんが
かつて一般・消化器内科をやっていたころと比べて増えている感触があります。
そのような行為は「セカンドオピニオン」とは呼びません。
「ドクターショッピング」「ホスピタルショッピング」と呼び、
これは現場で患者さんに責任を持つ医師からは忌み嫌われます。
医師~患者間の信頼関係というのは患者→医師という一方的なものではありません。
医師→患者の信頼関係もなければ医療はできません。
処方ひとつにしたって、この薬を出したら、処方箋の通りに飲んでくれるだろうという
信頼のもとに治療行為が成り立っているわけで、それがなければ薬一つ出すことができません。
薬の中にはいとも簡単に中毒を起こすものもありますし、
大量に溜めこんでそれを転売したものが悪用されたらそれは犯罪です。
在宅酸素療法の患者さんは絶対禁煙ですが、家の中での行為まで管理するわけにはいきません。
約束を破って喫煙して火災や爆発事故を起こすリスクがあるので、
患者さんがたばこを吸わないだろうという信頼がなければ在宅酸素療法はできません。
今目の前にいる患者さんはそういうことをしないだろうという
「信頼関係」をもとに治療行為や投薬を行っているのです。
前医で出された薬を自己判断でやめたとしたり顔で言ってくる患者さんに対して、
突然中止すると却って病状が悪化するような薬を出すのはためらわれますし、
いつ同じように知らないうちに勝手に他院受診をされるのかと思えば、
他剤との相互作用の多い薬を出すのはためらわれます。
結局「こっちで一生懸命診断・治療の道筋をつけても、自分もまた同じことをされる」
という懸念がどうしてもぬぐえないのです。
実際「ドクターショッピング」を繰り返してきた患者さんが、勝手に他院を受診して、
併用禁忌の薬を出されていたり、「○○医院では××と言われたんですけど」と
言われたという話は枚挙にいとまがありません。
そんなことを言われたってこちらはこちらで根拠を持って診断・治療に当たっているわけですし、
医者同士の話で相手の言うことやることが違うと指摘するなら、必ずその根拠を示す必要があるわけです。
あなたがこっそり他でやってきたことなど、私は知らないし、責任も負えない
というのが本音です。
自分で見たこと聞いたこと調べたこと確認したこと以外は有意な所見としてはとらない。
その上で必要ならば、更に見る聞く調べる確認する診察する検査する、というのは
現場で患者さんを診断・治療する上での基本中の基本です。
それを怠って患者さんに不利益をもたらすような医師は、
「藪医者」としていずれ現場から放逐されます。
私自身はそういうトラブルを防ぐために、ドクターショッピングの果てに自分のもとに
辿りついた患者さんには、安易な前医批判は絶対しないように心がけています。
状況によっては患者さんの目の前で前医に直接電話する…といったことまでやっています。
それは自分のちょっとした発言が相手にどう解釈されるか、という点で
決定的に「医師の立場から患者さんを信頼できない」からなのです。
こういう医師~患者関係は悲劇です。誰の得にもなりません。
私は「セカンドオピニオン」を求めてきた患者さんには、最大限誠意を尽くして対応しますし、
そういった患者さんに対して怒ったことは一度たりともありません。
一方で、「ドクターショッピング」「ホスピタルショッピング」をあまつさえ正当化までする
患者さんに対してはその場で叱りつけることもあります。
それは自分が面白くない、不愉快といった理由ではなく、
勝手な服薬中止やフォロー中断、治療の状況がわからないままでの追加治療などが、
即、患者さんにとって命にかかわるような不利益となる場合があるからです。
「ドクターショッピング」を推奨する、どんどんやるべきといった意見も時折目にしますが、
そこに決定的に欠落しているのがこの「医師から患者に向けた信頼関係」の視点です。
自分の状態を他の医師にも診てほしい、そう思った時は、まず現在の主治医ときちんと相談し、
その上で、セカンドオピニオン希望をきちんと話すべきです。
正当な理由なくそれを断るような医師は問題ですし、まともな話もできないでしょうから、
なにがしかの理由をつけて、他院に手紙を書いてもらうように仕向けるなどと言った
技術も必要になってくるかもしれません。
しかし、転医を考える時、あるいは「他院の話をして医者に怒られた」と感じた時は、
自分の行おうとしている、あるいは行った行為が「セカンドオピニオン」に当たるのか、
それとも「ドクターショッピング」に当たるのか、今一度考えなおしてみてはいかがでしょうか?
その上で、
「セカンドオピニオン」の求めを受けて怒りだすような医者に遭遇したら、即刻転医!
でも、「ドクターショッピング」をたしなめられたら素直に反省
するという態度が、「安全・安心な医療」を実現するために、患者側にも必要であろうと考えます。
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