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地域医療がうまく回らないのは医師偏在のため?(旭川医大 住友和弘先生のFacebookノートより)

旭川医科大学 循環・呼吸医療再生フロンティア講座の住友和弘先生のFacebookのノートに記載されていた内容です.
余りに的を射すぎていて,私が追加することなど,なにもありません.

是非,全国の自治体首長,市町村議会議員が一読し,かみしめるべき内容が書かれています.

住友先生ご本人の許可をいただいて転載させていただきます(傍線は原文そのまま).

北海道には約12,000人の医師がいます。そのうちの約50%が札幌に集中し、次いで旭川に多く分布しています。その他の地域を4000人に満たない医師でカバーしていることになります。さらに付け加えるとここで言う医師数は医師免許を有する数である事、年齢、産休、家庭に入っている方、診療科を特定していません。地域でプライマリーを担当する医師としては、内科が重要になります。実は、この内科医が道内で1番不足しています。以上の事実は、医師の偏在が地域医療問題の根幹と思わせます。

しかし、使命を感じて地域に行く医師が地域を去る現実があることを見逃してはいけません。その数を把握できているわけではありません。彼らがその後何かしらのアクションを起こすことはなく静かに何もなかったごとく過ぎています。なぜ、医師が地域を去るのでしょうか?

北海道の地方自治体の中には「医師が居てくれれば良い」と言うところが少なくないように感じます。医師の専門性、モチベーションは問わないのです。自治体側からは、”贅沢は言えないから”と言う反論が有るかも知れませんが、本当にそうでしょうか?私の経験上、彼らが期待することは病院赤字を削減する事であって、住民の健康増進をお願いしますと言いながら”新規の健康づくり事業提案”や”新規の事業投資”には非協力的だったりします。つまり、その言葉は、入院・外来(患者)を増やして病院赤字を削減して下さいと言う裏返しなのです。しかも、設備投資をせずに・・・。

医師の使命感を逆手に低待遇で重労働を強いることも無いわけではありません。職場環境が荒廃(人的、職員の気持ち、設備的)している場合があり、標準的な診療、治療に支障が出る場合もあります。また、コンビニ受診や地元の医療機関を信用せず低く扱う住民の意識にも少なからず問題があります。私が知る限りそういう地域は医師の離職とその後の招聘で苦労をしています。その教訓が次に活かされると良いのですが・・・。

このような環境は、長年、そこの地域に何らかの医療問題があることを知りながら放置し続けた結果です。このような何重もの負の財産を改善し普通に医療機関や地域医療が機能するまでに立て直すには年単位の努力と複数の心ある人の協力が必要です(トップの自分に覚悟とビジョンがしっかり有れば、協力してくれるスタッフが表れ、さらに支持してくれる住民もいれば再生は可能です)。医療保健福祉に関する確固たるビジョンのない自治体では、院長に丸投げなことが往々にして起こっており院長のビジョンと手腕が重要です。ですが、大切なことは、自治体病院であること、最終的には自治体の責任においてどのような地域づくりを行い、その政策の中で医療をどのように位置づけるのか!

最近、2つの医療機関の医師の退職の話を聞きました。町長から病院赤字解消のため入院を増やすようにプレッシャーがかかり、自分にはできないと判断されて退職の決断をされたケース。もうひと方は、効率的な病院運営を提案されましたが町長と意見が合わず退職を決断されたケース。

首長、議会の思い付き発言の背景に離職後の次の一手が有っての事でしょうか?自治体経営を考えてやむを得ない事情が有るのかも知れませんが、院長へのプレッシャーの前に町内で病院赤字問題、地域医療問題を十分に議論されたのでしょうか?院長達の長年の活躍がたった1年の躓きで消えとしたら私には寂しすぎると感じます。冷たい地域と感じます。なぜともに課題を克服する努力をしなかったのでしょうか?院長が経営責任をとるべき問題だったのでしょうか?今の北海道に多くの院長の首はありませんよ。丸投げ政策の結果、「医師の使い捨てはもう辞めて下さい。」と言いたい。

首長や議会は表面上の協力を口にしますが、実態を直視しメスを入れ、大きく舵を切ろうとはしません。彼らには出来ないのです。町にとって最大の問題である医療問題に対し、医療のしくみ、保健福祉との連携、病院赤字の本質を良く知りません。決まって年度末に病院赤字がいくらになったかを話題にしてどうして赤字なのか?どうすればいいのか?市民の健康を守る事とのバランスをどのようにとるのか?さらに言うと医療機関のサイズ、人的資源、医療機器など施設面は適切か?小さな自治体でカバーできる限界を知っているのか?広域での医療の成長戦略を描けているのか?何よりも住民がどんな生活(子供から老人まで)を望み、そのために必要な医療保健福祉であるのか?今の在り方は地に足の着いた運営なのか。行政力と政治が問題なのです。医療は住民が居て成り立つものであって、町の隆盛とパラレルである事に気付いているでしょうか?つまり、町に元気がないと、医療は再生しません

議会の不勉強は許しがたい物があります。それまでの良好な行政との関係をも打ち砕きかねない。議員としての資質を身に着けてから発言して欲しいと思います。後先を考えない思い付き発言は慎むべし。

確かに医師の偏在はあるものの、赴任した医師の医療問題以外の負担があまりに大きいことも地域医療がうまく回らない理由だと私は感じています。医師が地方に行き学びたくなるような医療保健福祉の特徴を作るべきと考えます。地域医療問題の半分は地域の行政や議会に問題があると思います。

医師は、プロフェッショナリズムに裏打ちされ望まれるところに働き甲斐を求めて行くと思う。しかし、その先が劣悪な環境で、彼らの成長の芽が枯れないように医師にとっての良い行政、悪い行政の指針が必要かもしれない。

一つ確実なのは若い医師がいきなり小さな自治体病院に単独乗り込むことはありません。中堅以上になってからです。ドンキホーテは私ぐらいでしょう。

誤解がないように書き足しますが、理不尽な自治体が多いわけではありません。多くの自治体は住民の生命・健康を守るためどうにかしようと頑張っているのだろうと思います。そして、多くの地域の医師もどうにかしなければと懸命にがんばっているのだと思います。どちらかに大きく依存しない、双方が疲れない、燃え尽きない仕組みが求められていると思います。
良い関係を継続するために医師、行政、議会、住民、医療関係者お互いに尊重し合う関係の構築が不可欠です。
それが医療の継続性に重要と思います。
誰か(医師とその家族)の犠牲の上に成り立つ地域医療では続きません

苦い過去の経験から感じている事です。

地域での経験は私を大きく成長させてくれました。感謝しています。今でも時々お邪魔するのを楽しみに待っていてくれる地域の皆さんが居る事を幸せに感じています。
志のある職員の発掘に成功し、私の地方での後半は病院の雰囲気も変わり楽しく過ごしていました。
あきらめている職員に希望を見出すのは、トップの仕事です。部下の良いところを見つけ伸ばす。
良くない組織は、職員のベクトルがランダムです。これを一定方向に向かせるには、組織の目標を明確にすること。熱く誰のための医療か必要性を語り、肩を押すことで同じ方向を向いてくれるようになります。褒めることを忘れない。
毎月の森林ウォーキングと健康講話は、患者さんのみならず住民との良好な関係を気付くのに一役かっていました。住民とのチャンネルを持つことも重要です。自分への良き理解者となってくれます。彼らは他の医療機関を知っていますから、足りないところを指摘し、私たちを見ています。アンケートを繰り返し行うと改善のポイントを指摘してくれます。

医師と住民の関係は良好であっても途中に横やりを入れる権力者がいると地域医療問題は難しくなってしまいます。

うまく回り始めた地域医療がなぜ壊れたのか?当事者たちは口をつぐみました。
それで良いのでしょうか?

今ある地域医療の課題を分析し、ダメなものは改め明日の楽しい地域医療を構築したいと思っています。
住民と医師と職員の関係が良好で有れば、良い医療が展開されるのは間違いありません。
この経験を多くの人に体験して欲しいと思います。
そうすれば、やりがいに地域格差が無いことに気付くはずです。

私は、いろいろな仲間に恵まれていたと思います。このことも重要です。孤立感を味わうと挫折しそうになりますが、そんな自分を支えてくれる人々のつながりが次への力になりました。多くの方々に心から感謝しています。

学生諸君は、自分が提供できる知識と技術をしっかり身に付けてほしい。実力がないのに大きなことを言ってみても誰も支持してくれません。「言うがごとく、行えること」が大切です。
しっかりと、あなたの未来の医師像を思い描いてみて下さい。
未来の自分のために、今すべきことをして下さい。

転載をご快諾いただいた住友先生,本当にありがとうございました.

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