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命のバトンとDNAR

81歳女性が「蘇生させるな」と胸にタトゥーを入れる http://labaq.com/archives/51698590.html


こんな記事がありました。
気持はわかるけど、女性が自分の体、しかも胸元に
傷をつけるなんて…
何か別の方法がなかったのか?

そんな風に考えていてふと思いついたのが「命のバトン」


前任地の隣の隣、羅臼町が、人口6000人に対し、常勤医師1名、それもいなくなるかという危機に陥り、
入院および夜間の救急受け入れ中止、緊急事態は70km離れた中標津まで搬送!という事態となったとき、
少し
でも夜間の緊急事態に対する不安を軽減しようと、
住民の健康情報、内服薬、疾患などを記載したものをプラスチックの細長いチューブに詰め込み、
冷蔵庫などに保管しておき、いざというときはこれを持ち出して搬送すれば、
初めてかかる医療機関でも既往歴や常用薬などの情報がわかるという、「命のバトン」が導入されました。

正式な名前を「救急医療情報キット」と言います。

羅臼で導入される前に、夕張でも導入されたことで、
ある意味地域医療崩壊の象徴として報道されたのが比較的記憶に新しいところです。

私はその夜間救急を受け入れる側の病院に2年間在籍しましたし、
羅臼からの夜間の救急要請を山ほど受けてきましたが、
「命のバトン」を実際に持参して救急搬送されてきた患者さんは、
自分の経験ではたった1例でした。

これをもって実効性がないというつもりは全くありませんが、
少し残念に思っていました。



さて、救急医療ないしは末期・高齢者医療で”DNR”ないしは”DNAR”という専門用語があります。

それぞれ、

”do not resuscitation”

”do not attempt resuscitation"

の略です。

要するに、急な心停止・呼吸停止などに際し、心臓マッサージ・人工呼吸などの処置を
しないでください。という、患者側の意思を示すのに使われる用語です。

救急対応・蘇生術のマニュアルともいうべきACLS・BLSプロバイダーマニュアルをひも解いても、
DNARについての記載はあり、そこで想定されているのは、
ブレスレット・アンクレット・文書による意思表示のようです。


待てよ!それなら、「助かるための情報」の他に、「蘇生してくれるな」という情報を
「命のバトン」に書いたっていいだろう。

あるいは、「エホバの証人」の輸血拒否だって、本人の署名捺印が確認できれば…。

それとも、臓器移植の意思表明カードなんかも入れておいていいだろうし…。


かつて、自分の身の回りで、導入されても使われることがほとんどなかった「命のバトン」ですが、
こんな使い方もあるのかも。

「バトン」じゃなく、医療情報をチップ化するようになれば、外出への携帯だってできるし、
アクセサリーのように身につけることだって可能になるかもしれない。

まあ、自分が考えるようなことは、他の誰かがきっと先に考えているのでしょうから、
すでにそういうことを実践している地域もあるのかもしれないですね。


医師になってから現在までの12年間、こんなことが言いづらい地域・勤務先にずっと勤務してきました。
(正直今だって言いづらいです。なんだかんだ言っても「地域センター病院」勤務ですから。)

動くべき立場の人が動かないと、こんな問題は解決されませんし、
来年あたりはそういう立場に自分がなるかもしれません。

そのときのための腹案として、自分の中に持っておきます。

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