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金曜午後の憂鬱

完全週休二日制が官公庁で施行されることになって久しいのですが…

さて,地方の病院はもちろんのこと,基幹病院クラスの病院でも,土日の体制は案外貧弱です.もちろん,大病院,大学病院クラスの病院は何かあればすぐに全員集合できるという体制でやっているところもありますし,いろんな科の中で,更にグループ分けされてそのグループごとに週末当番医師が決まっているというところも多いです.

私の勤務先の場合は,各科に土日オンコールがいます.内科も一人オンコール体制で,その一人が救急搬送同行などでいなくなってしまった場合に備えて,バックアップにもう一人が,1時間以内に戻れる場所で待機している,という体制をとっています.

一方,もうちょっと小さい施設の場合は,科,専門に関係なく,週末待機医師は病院(診療所)全体で一人,とか,週末は病棟・救急全て出張当直医が診る,といったところもあります.週末になると特定の分野の医師がいなくなり,患者さんの緊急事態には専門外の医師が対応するという体制の病院もあります

そんなところから,休日時間外のコンビニ受診は決して患者さんの得になりませんよといったところは延々と以前に述べたのでそちらを参考にしていただきたいのですが,今回は時間内の問題です.

私個人の感想ですが,臨床医のセンスとか,仕事ができるかどうか,といったことは,「金曜日にどれだけ仕事ができるか」が如実に現していると考えています.

金曜日に医師が行うべき仕事は,まさにリスクマネージメントそのものです.

土日,入院患者さんが現治療継続で悪化する可能性はどのくらいか?最悪,土日に急変してしまう可能性は?週末の採血を検査技師を呼んででも行うか否か?平日の人手のあるうちに内視鏡などの検査をしなくていいのか?逆に合併症の可能性の高い侵襲的手技なら,月曜日まで施行を待てるか否か?ある程度無理をしてでも土日のことを考えて金曜日のうちにやっておかなければならない処置はないか? はたまた,安定している患者さんを金曜日のうちに退院させなければ土日のベッドコントロールが大変とか,そんな判断までしています.

ここのリスクマネージメントが下手くそだと,土日の当番担当医師が大変迷惑(=患者さんが迷惑)しますし,土日の診療を外部の出張当直医に依存している体制の施設では,「こんないい加減な治療で丸投げしてくるような施設には来たくない,責任がもてない」と言って,出張医が怒って来てくれなくなる事態だってありえます.

そういうことも視野に入れているので,私などはことに金曜日の夕方が近くなってくると目がつり上がってくる,そんな状況です.もちろんスタッフや患者さんにはわからないようにしているつもりではあるのですが….

ことに,金曜日の夕方,勤務時間終了近くになってから突然受診した患者さんの扱いには,大変神経を使います.

もちろん,土日にだって必要な検査・治療は少ない人手で無理してでもやらなければならないことは当然ありますし,その場合は頑張ってやりますが,少ない人手で無理をすることは逆にミスを誘発することもありますので,土日でない方がやりやすい処置・検査・手術や,土日にはできないことでも月曜まで待たない方がいいことは,どんなに遅い時間になろうが,金曜日のうちにやってしまわなければなりません.その場合,医師だけでなく,看護師,検査技師,X線技師,薬剤師.全て,ほぼ例外なく残業となります.

この時間の受診ではCT,MRI,エコー,緊急内視鏡など,とかく過剰検査になりがちです.患者さんを守るためと同時に,昨今のご時世では医者自身の身を守るためでもあります.ことにMRIなどは担当レントゲン技師の得手不得手の関係で土日機械があってもできない施設もあります.普通の平日なら,明日朝一番で検査,治療,でOKというものが,金曜日で明日が土曜日という違いだけで,同じ扱いをしたら大変危険な場合が存在し,これは現行の医療体制の限界と考えています.金曜日の場合は明日でいいか,という判断ではなく,3日後まで大丈夫か,という判断を迫られる施設が未だに多数を占めると考えております.

あと,自院で治療できずに転院搬送する場合,この時間に受診したとして,後方病院に到着するのはたぶん金曜日の19~20時頃で,それからt-PA療法だの,心臓カテーテルだの緊急手術だのの準備に入りますので,実際にそういう急を要する治療を終了するのは,下手をすると土曜日の未明にまで食い込んでしまう場合もあります.

そういう意味で,基幹病院の先生方には,本当に頭が下がります.

こういった事情も鑑みて,ここを見ていただいた皆さんにお願いがあります

急な発症の場合はともかくとして,火曜日,水曜日あたりから具合が悪いのに我慢をして,週末が不安だからと金曜日のぎりぎりの時間に受診するのは,できればそういう事情から避けていただきたいです.

「週末が不安だ」ということであれば,木曜日か,せめて金曜日の朝一番で受診していただきたいのです

「医者のわがままだ!」「高い給料をもらって何を言っている!」という声が,今にも聞こえてきそうです…(でも,急患のために自分の時間を削って残業(時にサービス残業…)して働いているのは「高い給料をもらっている」医師だけではないのですが…)

上記の事情を読んでいただければ,我々が土日楽をしたいからというのがその理由では決してないことがわかっていただけるはずです

なぜこんなことを書くのか…

以前に勤務していた病院でのこと,当時私は金曜午後外来の担当でした.某老人ホームから,火~水曜日あたりから高齢の入所者さんの活気が低下していると,3週連続で同じ入所者さんを金曜日の夕方に連れてきたことがあったからです.施設の方からは「土日施設に置いておくのは不安です」ということで,しょうがなく経過観察入院として引き受けましたが,retro-spectiveに評価するならば朝一番で来てもらって昼間外来での経過観察と十分な検査をその日のうちに受けてもらえれば,入院の必要はないと思われた症例でした.

プロの介護施設の職員なら,連携先である後方病院が土日どれだけ貧弱な体制でやっているか,前からあった症状で金曜日の夕方になって「心配だ」と来られても,そんな時間にできることは限られており,自院で診れずに転送になったら,搬送先にも要らぬ迷惑をかける,くらいは常識として知ってほしいと思いました。(H30.6.26 少し表現を変えました。医療・介護連携というのはお互いのウィークポイントを共有しあうことから始まるのですが、なかなかうまくいかないものだと今も思います)

正直引き受ける方としては,「施設に土日置いておきたくないので,入院させることを目的にわざとそんな時間に受診させたんだろう」という先入観を持たざるを得なかったです.それは入所者さんの体調云々という問題ではなく,単に施設の事情だろう,本当に心配ならもうちょっと早く受診させればいいのに,入所者さんの利益は二の次か…などと考えると,こみ上げてくる怒りを止めることはできませんでした.大人げないと言われればそこまでですが…

また,前から症状があったのに金曜日の夕方になって「週末心配でとってもみていられないので,入院させてください」と突然寝たきりの高齢者を連れてくる(場合によっては救急車で来る)ご家族.こういった方に限って,元気になっても1週間置いてくださいとか,1ヶ月置いてください,と言って社会的入院を延々と続けることを要求する確信犯的な方が多い印象がありますが,その中にも本物の緊急を要する病気だってあります.「どうしてここまで受診を待ったんだ」…そう思うようなことは幾度となく経験しています.

むろん,特定の患者さん・ご家族を攻撃する意図はなく,単に「週末心配なら,せめてもうちょっと早めに病院に来てくださいね.必要な検査・治療はなるべく行い,どうしても必要なら週末経過観察入院もありですけど,当院で診てもいい程度の病気なのか,せめて判断する時間をウィークデーの昼間のうちに私も含めて病院スタッフにください.」と言いたかっただけです.

もちろん,突然発症の急な病気での受診は,金曜日だろうが夜間・休日だろうがご遠慮なく.それは必要なことですので.

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コメント

>ぽんた 様

コメントありがとうございます。
悪いのは患者さん本人ではない、というのがこの問題の難しいところです。
本文にも書いた通り本物の重症患者さんもいますしね…。

繰り返す確信犯については、超高額差額ベッドの料金を請求する、という手はいかが? 

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